8月15日、イスラム原理主義勢力タリバンがアフガニスタンの首都カブールを制圧し全土を支配下に置いたニュースが世界中を駆け巡った。2001年からアルカイダ撲滅のため軍事介入した米国が、タリバンとの合意に基づき駐留軍の8月末完全撤退を発表した7月8日からわずか5週間後の急展開に、欧米諸国は自国民とアフガン人協力者を避難させるのに大わらわだ。
タリバン幹部は17日に記者会見を開き、各勢力を含む包括的政府を樹立して国際社会からの承認を期待し、イスラム法の範囲内で女性の権利もある程度認め、民間避難民の安全な通行を保証するとした。だが、タリバンの報復や圧政を恐れる人々は国外避難しようとカブール空港に殺到。タリバンの通行妨害、米軍の厳重な空港警備も混乱に拍車をかけた。
26日には空港周辺でイスラム国(IS)の爆弾テロ(約90人死亡)も発生。外国人やアフガン人の避難を8月末までに終えるのは難しい情勢だが、タリバンは期限の延期を拒否。英、独、仏などでは米軍の性急な撤退を批判する声が高く、欧米はアフガニスタンを見捨てたという非難もある。バイデン大統領はテロリスト掃討、民主的政権樹立で役割は果たしたと反論し、米国人とアフガン人協力者を無事に退去させるまでは、空港の安全を確保するとした。
フランスは国際治安支援部隊として01~14年の間アフガニスタンに派兵した。今月16日~25日までに自国民およびアフガン人協力者約2500人(9割強はアフガン人)を脱出させ、27日には避難を終了した。
カブール陥落の翌16日、マクロン大統領はフランス人および仏協力者のアフガン人とその家族はもとより、人権活動家、ジャーナリストらの仏帰国・入国を支援するが、「不法移民の流れ」から国を守らねばならないと発言し、物議をかもした。左派諸党や人権団体は、戦争、抑圧、死から逃げる人は難民であって不法移民ではないと一斉に反発。マルセイユ、リヨン、ボルドーなどの左派市長はアフガン難民を受け入れる用意があると相次いで表明した。
大統領府は、フランスは2018年以来、欧州へのアフガン人5万人の難民申請のうち1万人分を受け付け、その8割に滞在を許可した(EU平均は63%)と数字を挙げ、多くのアフガン人を受け入れていると釈明。逆に右派はアフガン難民流入を警戒する発言を繰り返す。
英国は長期的に2万人のアフガン難民を受け入れるとしているが、EU内では意見が分かれており、今後、加盟国間の綱引きが行われそうだ。(し)