マジック、バイクの綱渡り、空中ブランコ…。ヴァンセンヌの森にあるテントで、次から次へとサーカスの定番演目が繰り広げられる。子どもも大人も大興奮。だが、動物は出てこない。
フランスでは動物愛護意識の高まりを反映し、昨年11月に動物虐待撲滅法が公布された。2024年にはペットショップでの犬猫販売が、26年にはイルカショーが違法となり、サーカスでの野生動物を使う芸も28年には禁止となる。
この法律にいち早く準じようと、サーカス団シルク・モンディアルは昨年の夏から「100%人間のサーカス」と謳って興行を始めた。同サーカスに出演するカルロスさんはこの道30年。国立サーカス学校を出た後、アクロバット、曲芸を経てラクダや馬を使った芸を売りにするように。だが「馬は他の芸人に売りました。動物のいるサーカスは、市など行政が興行を許可しなくなったので」。この日はピエロ役や、一瞬でパートナーの衣装を替えるマジックなどで大活躍。「サーカスは常に新しい芸を開発しないとやっていけない」そうだ。
客席は芸人たちのパフォーマンスに圧倒され、動物がいないことすら忘れているようだった。ある若いお母さんは、動物なしのサーカスに「賛同します。動物をいたわることを子どもたちに教えたい」。時代は変わる。(集)