日本の「核」を考える。
福島事故後に甲状腺癌が多発。
不十分な国の対応を代行。「こども基金」代表崎山比早子さん
広島・長崎の被爆者は、癌と白血病以外にも種々の疾患を病んだ。チェルノブイリ原発事故後、汚染地域で様々な疾患が報告されたが、国際機関で事故との因果関係を認められたのは、小児甲状腺癌のみ。そこで福島事故後、事故当時未成年だった福島県民の甲状腺癌検診が行われている。今年6月30日までに、194人が癌またはその疑いを診断された(手術後確定154人)。福島県民健康調査検討委員会は多発を認めながらも、「放射線の影響とは考えにくい」とする。
「事故当時5歳以下の症例が2人発見されるなど、その根拠は次々と崩れています。被曝の影響は否定できないと考えるべき」と崎山さん。甲状腺癌は「予後がいい癌」とされるが、現実には診断された子どもと家族は孤立して苦しむ。進学や就職にも支障を来たし、女性は結婚・出産に不安を抱く。付き添う家族の経済的負担も大きい。福島県民なら県指定の病院での治療は無料だが、他の県にも甲状腺癌になった子どもがいる。国の保障は不十分だと昨年7月、医師や市民が「3.11甲状腺がん子ども基金」を設立した。「再発や転移など、治療が一生続くこともあります。療養費の一部として、これまで14県・都の100人に一律10万円を給付しました。本来なら国が『子ども被災者支援法』に基づいて保障するべき」と語る崎山さんは、健康被害のより細やかで広域な調査と対策、継続的な支援が必要だと強調する。 (医学博士、元国会福島原発事故調委員)
仕事で被曝。
福島第一の収束作業と、除染に従事。池田 実さん
池田さんは東京の郵便局を60歳で定年退職後、原発事故後の福島のために何かしたいと、現地の仕事を探した。2014年に4カ月間、帰還困難区域の浪江町で除染作業に従事した後、9カ月間、福島第一原発構内で働いた。河川敷の除染作業はほぼ草刈りに等しく、緑深い山里が黒いフレコンバッグに覆われていくのを見ながら、除染の効果に疑問をもったという。
福一では高い線量のもとで、主に建屋内の機器や備品の分別回収作業にあたった。その間、福一と福二の作業員2人が事故で亡くなり、寮で同室の同僚が労災事故に遭った。池田さんの積算被曝線量は、除染従事期を含めて総計7.25ミリシーベルト(一般人の年間限度は1mSv)だった。「除染のときの被曝対策はずさんでしたが、福一の方が総じて労働条件は悪かった。下請け労働者は離職したら保障は全くなく、危険手当もピンはねされていました。国が前面に出て、被曝管理など作業者全員の労働条件と福利厚生の改善にあたるよう、強く望みます」と池田さんは語る。既に6万人以上が投入された福一の事故収束は、この先何十年も続く。「現場では無駄と無理が多いと感じました。無計画な大企業に投げずに、国が責任をもって収束作業を行なうべきです」。
▼Cinéma
『太陽の蓋』佐藤太監督 (2016)
2011年3月11日からの5日間、混乱を極めた首相官邸や東京・福島の人々の姿を描いたフィクション映画。橘民義プロデューサー来場。
11/2、 19h15-
29 bd du Temple, Grande salle Hénaff 3e
『飯舘村-放射能と帰村-』土井敏邦監 (2013)
原発事故後、全村避難となった飯館村。酪農はできなくなり、除染後も被曝の不安は募る。故郷喪失に直面した村人たちの苦悩と葛藤を描いたドキュメンタリー。
11/3、16h45-
入場無料(登録不要)
会場 Salle Jean Dame : 17 rue Léopold Bellan 2e