チェコ出身のフランティシェク・クプカ(1871-1957)は、カンディンスキー、マレーヴィチと並ぶ抽象画の先駆者だ。カンディンスキーが知的に構築した抽象だとすれば、クプカのそれは、植物の生命の源を描いたような有機的な抽象画だ。
300点を展示するこの回顧展は、その魅力をたっぷり見せてくれる。幾何学的な形の中でモクモクとキノコのようなものがうごめいている。花の内部を拡大したような抽象画もある。クプカは植物や鉱物の魂を描いたといってもいいだろう。1910年前後は、抽象だけでなく、象徴派的な神秘的具象画も描いていた。ウィーン滞在中に科学、哲学、神智学などを勉強し、パリでは大学で生物を学んだという教養人だが、それ以前のプラハの美学生時代に、デッサンを教えるかたわらチャネリング(霊媒)をして生活費を稼いでいたというから、もともと霊媒体質だったのだろう。
スフィンクスが立ち並ぶ不思議な空間を描いた絵や、蓮の中から人が生まれる作品には、そんなクプカの一面が出ている。ほとんどアニミズムの世界だ。その目で見ればクプカの有機的な抽象もアニミズム的だ。展覧会の後半では、それまでのクプカからは想像できない抽象画が出てくる。最後まで目が離せない展覧会だ。(羽)
7月30日まで、火休。
グランパレ
Grand Palais
Adresse : 3 avenue du Général Eisenhower, 75008 Paris , FranceTEL : 01 4013 4800
アクセス : Champs-Élysées - Clemenceau
URL : www.grandpalais.fr