
アトリエのイヴ・サンローラン(1936-2008) 。© DR
「流行は過ぎ去るがスタイルは永遠なるもの」と語ったサンローラン。スモーキング、船員服、パンツスーツなど男性服をフェミニンにデザインした革新的なコレクションによって、シンプルさと奔放、伝統と現代性を優美に融合させる彼のスタイルは確立した。1960年代に発表された「新しい」女性のルックは、女性が解放を求めた時代に同調し、刺激を与えた。
モンドリアン、マチス、ピカソの絵画、アフリカやロシアなど異国への「想像の旅」、古代以来の歴史的な衣装…さまざまなインスピレーションから生まれた美しい衣服と小物には、職人の伝統的ノウハウが注ぎ込まれた。1962年以来、お守りのように全コレクションを飾ったジュエリーの「ハート」も展示されている。「心のエレガンスがなければ、エレガンスではない」と言ったサンローランにとって、ハート(心、愛)は重要なモチーフだった。
デザインスタジオの再現は、これまでのサンローラン展覧会になかった興味深い要素だ。たくさんの書籍が並ぶ本棚、種々の見本、壁に貼られたカトリーヌ・ドヌーヴなど友人の写真、愛犬のポスター、ベルナール・ビュフェによる肖像画…仕事空間の中に、デザイナーの感性が覗いている。
バレエ・舞台衣装のデッサンや「美学的幻想」のコーナー、さままざまなビデオなどをとおして、コレクションの優美さだけでなくサンローランの創作の奥ゆきとエスプリ、品位が味わえる、魅惑的な美術館である。(飛)

①1966年に発表されたスモーキング。サンローランによるクロッキー。②サンローランが一番好きな画家・ピカソにオマージュを捧げたドレス、1979年。③1962年、ロジェ・セマナが創作したハートのジュエリー。展示されているのは1979年製のもの。「ハートを僕はシンボルにした」(サンローラン、1999年)。
INFORMATION
Musée Yves Saint Laurent Paris
5 avenue Marceau 75116 Paris
Musée Yves Saint Laurent Marrakech
- モロッコはマラケシュのマジョレル庭園のすぐ近くに、10月19日、もう一つのイヴ・サンローラン美術館がオープンする。サンローランとベルジェは1966年からモロッコのマラケシュにも家をもち、サンローランはその家で毎年2度のコレクションのデッサンを描いた。
Rue Yves Saint Laurent, Marrakech 40090 Maroc
www.museeyslmarrakech.com/fr
写真:© Fondation Pierre Bergé – Yves Saint Laurent Paris

Musée Yves Saint Laurent Paris
Adresse : 5 avenue Marceau, 75116 ParisTEL : 01.4431.6400
URL : www.museeyslparis.com
・ 火曜〜日曜 11〜18時。金曜夜間21時まで。1月1日、5月1日、12月25日休。
