パリ最高裁判所は8月22日、ベトナム戦争中に米軍が使用した 「枯葉剤」の被害者トラン・トゥ・ニャーさん(83)が枯葉剤を製造した企業14社を相手どった訴えを受理できないとの判断を下した。トランさんは、それらの企業が米政府から強制されて枯葉剤を製造したのではなく入札制で受注し製造を行ったことや、枯葉剤の毒性を知りながら致死性を高めるダイオキシンを一定量より多く使ったことなどから、企業の責任を追求してきた。
トランさんは南ベトナム解放通信社の通信員として戦地を移動中、1966年に枯葉剤を浴びたり汚染された沼地に入るなどした。その翌年初めて授かった子は心臓の疾患をもって生まれ17ヵ月で亡くなり、さらにふたりの娘に恵まれるも、αサラセミア、脊髄の奇形、重度の喘息などの問題とともに生まれた。米政府は17の病気を枯葉剤の被害として認めるているがトランさん自身も、それらの、ガン、糖尿病、結核ほか6、7の病を患ってきている。
米軍がベトナム戦争の最中、10年間(1961-71) にわたって散布した枯葉剤は、ベトナム南部の森の20%を汚染した。被害者は300万人といわれ、今日でも子どもたちが外形的障害をもって生まれたり、多くの人が遺伝疾患やがんなどに苦しむ。トランさんの家でもそうだが、被害は4世代目にまで受け継がれてしまった。米軍の兵士たちは枯葉剤を製造した企業からの補償を受けたが、ベトナムの被害者たちの訴えは米の最高裁で却下された。1990年代からフランスに住み国籍を有し、枯葉剤の直接の被害者であるトランさんはフランスの法廷で枯葉剤を製造した米企業の責任を問うことができる、世界でも数少ない人物だ。多くの被害者のためにも、これからも訴訟を続けていくという。