スウェーデンの国民食であるソーセージや、児童文学の傑作「長くつ下のピッピ」のピッピに扮したペーター・ヨハンソン(1964-)のキッチュな写真は笑いを誘う。自作自演の美術家で、スウェーデンの伝統文化の象徴をターゲットにしている。
展示室には軍隊行進曲が流れ、国旗がはためき、一人で何役もこなすヨハンソンの写真がある。ヌードになるのも辞さない。二階のビデオでは貴婦人に扮したヨハンソンが退屈そうにソーセージを食べている。国の宝ともいえる古典的な肖像画の下にはソーセージがトグロを巻いている。こんなにからかってナショナリストから攻撃されないのか。エヴァ・クムリン館長によれば、「ネットで激しく攻撃されているが、彼の中には大きな怒りが渦巻いているので、どんな攻撃にも負けない」のだそうだ。ポピュリズム、ナショナリズムが世界を席巻している現在、国民の文化的アイデンティティとは何かを突きつけるのがヨハンソンだ。会場の行進曲は極右が好んで使うものだが、元はフィンランドの曲、ソーセージは銅山で働くドイツ人労働者が作ったものから始まった。伝統と言われているものが実は外国由来だったりする。スウェーデンに限らない普遍性を感じさせる展覧会。(羽)
Institut suédois à Paris
Adresse : 11 rue Payenne, 75003 Paris3月1日(日)まで。無料。 2/29(土):ヨハンソンの講演あり。