アーマド・バーラミ監督は1972年生まれのイラン人。短編やTVドキュメンタリーを手がけたのち、『Panah』(2017)で長編デビュー。長編2作目の『The Wasteland (荒れ地)』(2020)が、ベネチア映画祭オリゾンティ部門で最高賞を獲得した。これは三部作の1作目に当たるが、コロナ禍で公開が遅れ、そうこうするうちに三部作の2作目『The Wastetown』(2022)が完成。
この度フランスでは、この2作が立て続けに公開へ。ややこしいのは後に撮られた『The Wastetown』が8月2日、 『荒れ地』が9月6日に公開になること。3作目は現在制作中だ。
『The Wastetown』は生き別れた息子を探しに、車のスクラップ工場を訪れる女性が主人公。夫殺しの罪で10年の刑に服し、外出許可がおりたところだ。その壮絶な身の上は今年3月に公開され話題となった傑作ドキュメンタリー『Sept hivers à Téhéran (Seven Winters in Tehran)』(2023)で、死刑宣告を受けた実在の女性を思い出させる。絶望感を感じる境遇だが、これもまたイラン人女性の抑圧された現実が反映されているのだろう。
一方、『荒れ地』は閉鎖される煉瓦工場の労働者を描く。劇中では工場主による閉鎖の説明シーンが繰り返される。『The Wastetown』と同様、ここでも地方を舞台に、出口なき人間の運命がモノクロームの世界に閉じめられる。よく見ると両作には同じ男優が別の役で登場。三部作の3作目まで見れば、その意味が鮮明になるのだろうか。いずれにしても、これからイラン映画を面白くしてくれそうな大胆不敵な才能の出現だ。(瑞)