毎日30億以上の画像がソーシャルメディアでシェアされているという。「氾濫する画像」を起点にして、ヴァーチャルなものの貯蔵と価値、アートの貨幣価値、貨幣流通が産む目に見えない動きなどをテーマにしたビデオ、写真、インスタレーションである。普段あまり考えないヴァーチャルなものの価値について気づかせ、頭のどこかに気になる杭を打ち込む、そんな展覧会だ。
アマゾンが抱える膨大な本の倉庫を撮ったアンドレアス・グルスキの写真は、ネット販売の物流と消費エネルギーの大きさを視覚化していて圧巻だ。マルタン・ル・シュヴァリエのビデオでは、殺風景で誰もいない部屋の映像にインターネットで「いいね」をクリックしたり、検閲にかかりそうな画像を見つける仕事をする世界中の人たちの声がかぶる。仮想現実と現実が重なり、見えないものを見せられた気持ちになる。一番印象に残ったのはマキシモ・ゴンザレスの2作。使用できなくなった紙幣の端を折って、政治家や企業家の犯罪を象徴する「白い手」を作った。もう一作では、やはり廃版になったメキシコの紙幣でレゴのようなパーツを作り壁に貼って、廃墟化した都市のようなオブジェを作った。見た後で考えが膨らむ、優れた作品だ。(羽)
6月7日(日)まで
Jeu de Paume
Adresse : 1 place de la Concorde, 75008 Paris火11h -21h 水- 日11h-19h月休