「旅する猫」巨大彫刻、カルーセル・デュ・ルーヴルで展示。
日仏友好160周年、京都市とパリ市友情盟約締結60周年を記念して、京都を拠点に活躍する現代美術作家・ヤノベケンジさんと、和紙作家・堀木エリ子さんふたりによる「SHIP’S CAT 」展が開催されている。
「SHIP’S CAT 」とは、大航海時代に船に乗せられ、食物や貨物、疫病などを防ぎ船を守った猫のことを指し、元来ネズミなどを駆除させるために船に乗せていたのが、次第に守り神、またはマスコットのように扱われるようになったという。
ヤノベ氏は、昨年からこの「旅する猫」をモチーフに、高さ3メートルの巨大彫刻を制作し、博多、福島、銀座、鎌倉などで展示してきた。「世界中の若い旅人の道中を見守り、幸運をもたらす」ためのパブリック・アートとして博多のホステルにパブリックアートとして制作したのが最初だったが、今回はその巨大猫が、本当に船に乗って旅をし、パリのカルーセル・デュ・ルーヴルの展示室にお目見えする形となった。
いっぽう「建築空間に生きる和紙造形の創造」をテーマに30年以上活動してきた堀木エリ子氏による「SHIP’S CAT 」は、楮や糸を漉きこんだり、水滴を投げつけるなどの手法で独特な質感をもたせた紙を使い、ヤノベ氏の近代的でメタリックな猫と対照をなす。
骨組も、糊も使わずに、立体に成形された樹脂の上に和紙を漉きあげるという独自の塑造方法で作られた、考える猫、眠る猫、高さ2.6メートルのトーテム猫。7800mm 2700mmの継ぎ目のない大型の創作和紙を使った平面作品や、「陽光」を表現した大きな照明インスタレーションなど、それぞれの作品の和紙の細やかな表情が、灯りによって浮かびあがっている。
「和紙をモノとしてではなく、環境として捉える」という堀木氏は、観る人に「和紙の空気感」を感じてほしいとオープニングで語った。なるほど、普段のカルーセル・デュ・ルーヴルの展示室とはまったく異なる「空気感」が醸し出されている。福井県の越前和紙の工房でタタミ3畳分の和紙を制作しながら、新しい紙作りに挑み、舞台美術、商業・公共施設のアートワーク、建築などに活用する堀木氏の大きな作品を鑑賞できる、またとない機会だ。展示されている作品のうち2作品は、京都に10月にオープンするホステル「WeBase京都」に常設される。(集)
会場でのイベント
8月22日(水):15h〜16h 田中彩子(ソプラノ歌手)
8月23日(木):15h〜16h 広瀬悦子(ピアノ奏者)
8月25日(土):15h〜16h ヤノベケンジ × 堀木エリ子 × コリーヌ・ブレ(*)3者トークショー
*コリーヌ・ブレ:1982年から90年にかけて日刊紙リベラシオンの特約記者、日本の月刊誌『STUDIO VOICE』編集長を勤めた、日仏文化交流の実践者。
「SHIP’S CAT 」Carrousel du Louvre (Soufflot, Foyer)
Adresse : 99 rue de Rivoli, 75001 Paris , Franceアクセス : Palais Royal - Musée du Louvre
8月28日まで