『プレイボーイ』の表紙を飾ってひんしゅく買ったかと思うと、自分が設立した基金に資金乱用疑惑が浮上。マルレーヌ・シアッパ社会的連帯経済担当相の周囲はかまびすしい。
シアッパ氏が4月6日発売の男性娯楽誌『プレイボーイ』の表紙を飾ることが3月末に発覚して以来、政界から批判が噴出した。イザベル・ロム男女平等担当祖(シアッパ氏が2017-20年務めた職)は「なぜセクシストのステレオタイプが凝縮した雑誌を選んだのか」と批判、ボルヌ首相は年金改革法で社会が緊迫している時期に「まったく不適切」と顔をしかめた。本人は女性の権利獲得の闘いのためにインタヴューに応じたと涼しい顔。これも、同氏お得意のプロモーション作戦か?
それと時を同じくして、別の話題でシアッパ氏に注目が集まった。ニュース週刊誌「マリアンヌ」と仏国営TVフランス2が3月末に暴露した疑惑だ。疑惑の対象は、歴史教師サミュエル・パティさんがイスラム過激思想の若者に殺害された2020年10月の事件をきっかけに、21年春、当時は市民性担当相だった同氏が設立した「マリアンヌ基金」。基金は250万€の資金を得て、フランスのライシテ(非宗教)原則を否定する“分離主義”撲滅を目的に17の市民団体のプロジェクトを承認。しかし、認可された体育徴兵準備会社連合(USEPPM)は基金から35.5万€の援助を受けたが、ウェブサイト作成以外に活動の実態がみられないうえ、12万€がUSEPPM元幹部2人への給与に使われたとか、30万€の補助金を受けた「Reconstruire le commun」協会は活動内容が不明なうえに、イダルゴ=パリ市長ら左派政治家をサイトで中傷した、などの疑惑が暴露された。
こうした報道を受け、ソニア・バケス市民性担当相は3月29日に行政監査総監(IGA)に同基金の監査を依頼したほか、イダルゴ市長からの訴えや犯罪過激化予防省際委員会(CIPDR)からの通報を受け、パリ検察局はマリアンヌ基金の資金乱用疑惑を金融検察局に送検したと21日明らかにした。シアッパ氏の官房はIGAと検察から差し押さえを受けたと7日に認めたが、同基金の資金乱用については否定した。上院の社会党と国民連合はこの問題についての国会調査委員会の設置を要求している。また、パティさんの遺族は疑惑にショックを受け、解明を求めている。なぜか、政府はこの疑惑に沈黙を守ったまま…。
国の象徴であるマリアンヌを想起させる白いロングドレスをまとったシアッパ氏が登場した話題のプレイボーイは発売日に数時間で10万部が売り切れ、6万部が追加印刷されたとか。話題を振りまいた煽りでマリアンヌ基金の疑惑にも注目が集まったシアッパ氏。ほくそえんでいるのはプレイボーイ誌だけか?(し)