Sardines grillées
パリの魚屋にも、目がキラキラとし、えらに赤いしみがなく、銀色の胴体が張りつめているような鮮度のいいイワシが並ぶ。8月から10月にかけてのイワシは、大きく成長し、脂ものっていて食べごろ。そのまま塩焼きにして味わいたい。4人分で800グラムほど買ってくる。
まずミネラルウォーターなどペットボトルのキャップを使って、薄い皮がはがれないように慎重にうろこをとる。次は頭を切り落とし、はらわたを抜く。ボウルに水をたっぷりとり、氷のかけらも加えて冷たくし、イワシを入れ、くっついているうろこを洗い流し、キッチンペーパーで水気を吸いとる。
一度にたくさん焼けるように、テフロン加工の大きめのフライパンにさっと油を塗って、中強火にかける。熱くなったら、塩、コショウしたイワシを並べる。この量だと2回に分けて焼くことになるだろう。塩は少し粗い塩の華を使ったら申し分ない。焼き色がついたらひっくり返し、同じように焼き色をつけたら、即座に食卓に出してとり分ける。手でつかんでむしゃぶりついてもいいけれど、フォークとナイフを使ってというときは、ナイフを、頭があった方から尾にかけて身の真ん中に切れ目を入れ、静かに開くと、腹骨なしできれいに身がとれる。尾を静かに引っ張り上げながら中骨をのぞくと、もう片側の腹骨もきれいにとれるだろう。レモンをしぼりかけて熱々を味わう。
2回目を焼くときは、その前にフライパンを熱湯で洗って布巾でぬぐうことを忘れないように。食卓から、「早く、早く!」というせかす声が上がってくるだろう。バーベキューと違ってフライパンで焼くと煙がほとんど出ないのがうれしい。
付け合わせだが、ぼくはモロッコのエサウイラ風にトマトのサラダをたっぷり添えることしている。トマトを輪切りにし、薄く切った玉ネギ少量も加え、オリーブ油のドレッシングで和え、きざんだパセリ、そしてクミンパウダーを振りかける。飲みものはビールか辛口の白ワイン。(真)
4人分:イワシ800g、油少々、レモン、塩、コショウ
Sardine
イワシは大西洋の海流に乗って移動するので、モロッコからポルトガル、フランスのブルターニュにかけてイワシ漁が盛んだ。もちろん地中海でもイワシがとれるがどちらかというと小さめで、ブルターニュ産の大きめのイワシのほうが塩焼きに向いている。ポルトガル人は大のイワシ好きで、パリに住んでいたときには、1階のポルトガル人の管理人が焼くイワシの匂いが、ぼくらのアパートがあった7階まで昇ってきたものだ。小さめは、思ったより淡白な味わいだから、生のままマリネにしたり、ブイヤベースにしたり、油で揚げてから南蛮漬けが定番。
Sardines à l’escabèche
イワシの南蛮漬け(エスカベッシュ)を作ってみよう。イワシ600グラムをレシピのように下準備して三枚におろす。腹骨は、揚げてマリネすると気にならなくなるのでそのままでいい。
玉ネギ半個、ニンジン1本、赤ピーマン半個はせん切り、ニンニク2片はみじん切りにし、たっぷりのオリーブ油で2分炒める。色がつかないように弱火です。白ワイン1カップ、ローリエの葉1枚、丁字2本も加え、沸騰してきたら、レモン1個分の搾り汁を入れ、軽く塩をし、カイエンヌペッパー少々と砂糖少々を加える。再沸騰したら、2分ほど火を通し、1時間置いておくとマリナードになる。
イワシの両面に軽く塩、コショウし、薄く小麦粉をまぶす。フライパンに落花生油をたっぷりとって中火にかけ、油が熱くなったら、イワシを、皮の方が下になるように入れて揚げていく。きれいな色がついたらひっくり返す。もう片側にも色がついたらとり出し、バットに重ならないように並べる。先ほど用意しておいたマリナードを熱くし、イワシの上からかける。ラップして冷蔵庫に入れ、少なくても1日は待ちたい。甘酸っぱいマリナードのうまみを吸ったイワシのおいしさは格別だ。