Sam Szafran. Obsessions d’un peintre
抽象画が主流となった戦後の美術界で具象画を描き続けたサム・スザフラン(1934-2019)は、どの派にも属さないスタイルのため、美術史上ほとんど研究されていないという。60点を集めた回顧展は、今シーズンの掘り出し物である。
ユダヤ人家庭に生まれ、家族のほとんどを強制収容所で失った。悲惨な子供時代を過ごし、戦後、非行に走ったが、絵の才能のおかげで非行から抜け出すことができた。絵はほぼ独学。国立美術学校を受験したが、ディクテ(書き取り)で失敗し、不合格になった。フランスでほとんど学校に行っていないので、綴りができなかったのだ。
それでもモンパルナスの画家たちと交流し、2回目のグループ展で老舗のクロード・ベルナール画廊に発見されるという幸運に恵まれた。以降、この画廊で何度も展覧会をしている。
パステルという、当時時代遅れとみなされた画材を好み、大画面にアトリエや印刷工房内部、階段を精緻に描いた。紙も手も汚れやすいパステルでこれほど細かく描いた作品を初めて見た。
スザフランには特殊な空間感覚がある。室内風景は少し歪んでおり、アトリエに生い茂る植物の影に、座っている妻の姿が小さく描かれていたりする。植物が生い茂るアトリエは癒される風景だ。(羽)
2023年1月16日まで
オランジュリー美術館 テュイルリー公園内
Adresse : Place de la Concorde, 75001 Parisアクセス : M°Concorde
URL : http://www.musee-orangerie.fr
12.5€/10€ 火休、 水〜月 9h-18h