
マクロン大統領は4月9日に放映された国営TV番組のなかで、フランスがパレスチナを国家として承認する意向を明らかにした。承認は6月に国連で開催される会議の席でのこととなるが、仏が承認すればG7の国では初となる。
大統領は、国連本部でパレスチナ国家の真の樹立を目指す会議をサウジアラビアとともに主催する予定だ。その会議でイスラエルを承認していない国々による同国承認を目指し、相互承認の動きによって「二国家解決」を推進していきたい考えだ。現在、パレスチナを承認している国は147ヵ国あるが、イスラエル寄りの米国との関係を重視していた欧州連合(EU)の主要国やG7は承認していなかった。しかし、2023年10月のハマスの攻撃から始まったイスラエルによるガザの攻撃と破壊が止まないことから、この地域に恒久的な平和をもたらすためには二国家解決の実現が必須との考え方が広がり、昨年5月にはアイルランド、ノルウェー、スペインが相次いでパレスチナを国家として承認した。
一方、アラブ諸国側では、アラブ首長国連邦、バーレーン、モロッコなどが2020年にイスラエルと国交を正常化し、イスラエルとアラブ諸国の対話が進んだが、イスラエルによるガザ攻撃が始まると、その動きはストップ。交渉が進んでいたサウジアラビアとも外交関係は中断したままだ。マクロン大統領は7日にエジプトを訪問し、エジプト主導のアラブ連合によるガザ再建案への支持を表明した。これにはパレスチナ自治政府の改革と刷新が前提条件とされている。
またマクロン氏は、停戦の第1段階が終了した3月2日以来イスラエルが搬入を阻止している人道支援物資を早急にガザに入れ、残り15人ほどの人質をハマスが開放し、早急にイスラエルに停戦を促したい考えを示した。そのためには、ガザを支配して住民を追い出しリゾート地にするという米トランプ政権とイスラエルに対抗できる欧州・アラブ諸国の結束を強めたいところだ。
マクロン大統領の発言は国内では左派や中道には歓迎されたが、極右の国民連合は「ハマスに依存する」パレスチナ政府を承認するのは「時期尚早」と反対した。「服従しないフランス」党(LFI)のパノ氏は「2年におよぶガザでの虐殺の末にやっと」とコメント。6月にフランスが承認しても何かが劇的に変わるということはないが、初めてG7の国が承認することの象徴的意味は大きいだろう。3月18日に停戦を破ってガザ空爆を再開したイスラエルと、それを支持する米国を止める手段は今のところはないように思えるが、ほかの国々が 二国家解決の動きに集結すれば、将来、米、イスラエルに対する圧力になるのではないだろうか。(し)
