オンライン映画祭の先駆け「マイ・フレンチフィルム・フェスティバル」
世界中から旬のフランス映画にアクセスできる、MyFrenchFilmFestival。12回目の今年は2022年1月14日から2月14日まで1ヶ月間開催される。ユニフランス*代表のダニエラ・エストナーは、「この数十年来、本映画祭は若いフランス映画を紹介し、ソフィー・ルトゥルヌール、カンタン・デュピュー、ミカエル・アース、ヴァレリー・ドンゼッリ、レベッカ・ズロトヴスキらの作品を世界に発信してきた」と成果を強調。オンライン映画祭の先駆けとして、今後も進化を止めない現代フランス映画の盛り上げ役を果たすだろう。
*フランス映画の外国普及を促進する機関
長編コンペティション作品
- 『À l’abordage』 Guillaume Brac
- 『Calamity』 Rémi Chayé
- 『Cigare au miel/ハニー・シガー 甘い香り』 Kamir Aïnouz
- 『Indes galantes/優雅なインドの国々 バロックmeets ストリートダンス』 Philippe Béziat
- 『Médecin de nuit/パリ、夜の医者』’Élie Wajeman
- 『Playlist/プレイリスト』 Nine Antico
- 『Sous le ciel d’Alice(アリスの空)』 Chloé Mazlo
- 『Teddy/テディ』 Ludovic & Zoran Boukherma
- 『Un pays qui se tient sage』 David Dufresne
- 『Une vie démente/イカした人生』 Raphaël Balboni & Ann Sirot
長編コンペティションではジャンル多様な秀作10本が鑑賞できる。カンヌ映画祭批評家週間で紹介された『Sous le ciel d’Alice / アリスの空』は、クロエ・マズロの初長編監督作品。レバノン内戦に巻き込まれゆくスイス人女性とレバノン人男性カップルによる愛と運命のドラマ。悲劇を内包しながらも、パステルカラーを基調としたケレン味あふれる演出が魅力だ。
ジャック・ロジエやエリック・ロメールの系譜を継ぐギョーム・ブラック監督『À l’abordage!』のエントリーは、コロナ禍で見逃した在仏シネフィルにとって朗報だろう。フランス国立高等演劇学校の生徒と作り上げたミニマルなバカンス映画だが、ちょっと緩めな南仏の青春模様は、今となっては別世界のようで懐かしさすら感じる。日本在住者は今年の劇場公開を待とう。
ドキュメンタリーも見応えがあり大変お勧めだ。フィリップ・べシア監督『Indes Galantes / 優雅なインドの国々 バロックmeets ストリートダンス』の舞台は、パリのオペラ・バスティーユ。クレマン・コジトー演出とビントゥ・デンベレ振り付けのもと、30人のイキのよいストリート・ダンサーたちがラモーのオペラ=バレエ『優雅なインドの国々』に挑戦する、ボーダーレスな芸術誕生の記録である。
ダヴィッド・デュフレヌ監督の『Un pays qui se tient sage』は、黄色いベスト運動を前にエスカレートする警察の暴力を余すところなく見せ本国を騒然とさせた問題作。生々しいスマホ動画やニュース映像、関係者インタビューなどで構成される。これもまた現代フランスの理解を助ける重要作に違いない。タイトルはひざまずく高校生に警察が言い放って炎上した言葉「Voilà une classe qui se tient sage ! ほら、聞き分けの良いクラスだ」から援用。
『カラミティ』はその名の通り、西部開拓時代に実在した男装の女性ガンマン「カラミティ・ジェーン」がモデルのアニメ。カラミティの少女時代を描いており、新しい時代の肩肘張らないフェミニズム映画の顔も持っている。アニメ映画祭の最高峰、アヌシー国際アニメーション映画祭ではグランプリも受賞した。2Dの手描き彩色がとびきり美しい本作の監督はレミ・シャイエ。
他にもコンペ外の長編部門には、マルグリット・デュラス原作、ジャン=ジャック・アノーの不朽の名作『愛人/ラマン』も用意。各作品には「揺れるアイデンティティ」「欲望のシネマ」「ヴォヤージュ」といったテーマ別でタグ付けもされているので、迷った時の作品選びの参考に活用したい。台詞なしの子供向け短編アニメ部門もあり、子育て世代も家族で楽しめる。
また、世界中のインターネット視聴者からMYFFF公式サイトにて投票を募り、もっとも多くの支持を得た2作品を「観客賞」として表彰します。
鑑賞可能な作品や料金体系は国ごとに異なる。フランスと日本在住の場合、短編映画は無料配信、長編映画は1本1,99€。全作品が見放題で鑑賞できるパック料金は7,99€となっている。(瑞)
MyFrenchFilmFestival 2022公式サイト
【日本語】https://www.myfrenchfilmfestival.com/ja/
【フランス語】https://www.myfrenchfilmfestival.com/fr/