高級箸の製造で知られる「マルナオ」(本社は新潟県三条市)が、パリ7区にブティックをオープンした。同社はすでに日本全国の百貨店で製品を販売し、欧州、北米、アジアへ向けての輸出もしているが、海外直営店はこれが初めて。今年は創業80周年を迎え、8月末に東京青山店をオープンしたばかりだ。
新しい店内には、主に黒檀や紫檀の銘木で作られたカトラリー、エスプレッソ・カップとソーサー、ステーショナリー(万年筆、万年筆ケース、ルーペ、ペンホルダーほか)など、つい手に取って感触を味わいたくなる商品が並ぶ。 そのなかでも品数とバリエーションが多いのは、やはり箸。銘木のなかでも最高級といわれ、バイオリンなどに使われることの多いスネークウッドに象嵌をほどこした丸箸(写真上左)。インド産の黒檀「インド真黒(マグロ)」を十六角形の箸にし、螺鈿(らでん)模様をあしらった丸箸は、先端の直径が1.5mmと細いうえに、8角形に加工されている(右)。これ以上贅をつくすのは不可能に思えるような1000ユーロ以上の箸から30ユーロ代のものまでを手にとって、持ち心地を試すことができる。
商品に物語性があるのも特徴だ。〈旅する箸〉シリーズは、洗練された東京の青山をイメージした「アオヤマブルー」、夏の夜、遅くまで屋外でワインを楽しみ生きることを楽しむ人々の町「ミッドナイト・パリ」、ほかにも「バレンシアの香り」「マンチェスタービー」など、旅する社長の町の印象や思い出を箸で表現。ほかのシリーズでも「空の調べ」、「菜の調べ」など、ネーミングにも詩情が漂う。
箸の頭に銀でイニシャルを入れられるもの(写真左下)、中央にネジがあり携帯の際は短くできる箸(と、その箸袋。写真右下。箸と同じ木での箸箱もある)、手にどっしり存在感が欲しい人のための45g箸、60g箸…。いずれも、仏壇彫刻師だった福田隆宏社長の祖父・直悦氏が、大工道具「墨坪」の車の部分を作る会社として1939年に創業し、木工のノウハウと職人技を培ってきたマルナオならではの製品だ。
デザイン性と機能性を兼ねた同社の商品は、デザイン界、料理界からも高く評価されている。黒檀製「パスタ・フォーク」は銀座のイタリア料理店「FARO」の能田耕太郎シェフから注文を受け、麺を巻き取りやすいフォークを1年間かけて開発したもので、銀座の店で実際に使われている。黒檀に人工大理石をあしらった箸「Marunao Star」は、ファッション・ブランドのサンローランの目にとまり、コンセプトショップSAINT LAURENT RIVE DROITEで「Marunao baguette damier」として販売中。同じお箸はパリのマルナオでも買うことができる。
2007年からフランクフルトの見本市、2011年からインテリア見本市「メゾン・エ・オブジェ」に出展するようになり、パリでの反応の良さに「食とデザインの町だと感じ、海外で何かやるなら最初はパリだと思っていました」と福田社長。昨年マレ地区で期間限定のポップアップ・ストアを開くなどして、違った地域の雰囲気や客層を肌で感じたり実地の調査を重ねた上で、今回の出店となった。パリ店限定商品もあり、また今後は箸づくりのアトリエ、いい箸を「長く使ってほしい」との思いから削りなおしなど、メンテナンスサービスも予定されている。(集)
Marunao Paris
Adresse : 33 rue Rousselet , 75007 Paris , Franceアクセス : Duroc / Vanneau
URL : http://www.marunao.com/
日月休、11h-19h