ハンガリーの作曲家ジョルジュ・クルターグが子どものために作曲した『Játékok (遊び)』があまりに美しい。連弾の曲もあり、映像はあるのかなと 「kurtag jatekok youtube」とパソコンに打ち込んだら、この一生の宝が現れた。妻マルタとの、2012年Cité de la Musiqueでの演奏で、ジョルジュ86歳、マルタ85歳。背は曲がり足元もおぼつかないが、演奏は、今そこで音楽が誕生しかのような若々しさ。音による俳句といってもいい小品集『遊び』に、クルターグ自身が編曲したバッハの曲が入って音の世界を創り出していく。
たとえば『遊び』からの、二人の手が交差する 『L’homme n’est qu’une fleur』では、沈黙から一音一音が浮かび上がって消えるまでの響きに歌があり、それに続く 「間」が息づいている。そしてバッハの 『深き苦しみの淵より、われ汝に呼ばわる』が続くのだが、張りつめていた空気が、とたんに広々とのびやかになり、「ああ、音楽はいいなあ!」 とつぶやいてしまう。
アンコールを入れると1時間25分の演奏だが、二人の技巧は最後まで衰えない! メルシ、クルターグ夫妻!(真)