先日閉幕した全仏オープンではフランス人選手の活躍は今一つだったが、フランス人はテニス好きが多い。4大大会は熱心に観戦するし、プレーヤー数は世界でも最多レベル(仏テニス連盟加盟者は98万人)。米ウィルソンに次いで世界第2位のテニスラケットのシェアを誇る「バボラ」は、先の全仏で優勝したラファエル・ナダル選手も愛用するブランド。リヨン郊外コルバにストリング工場を訪ねた。
テニスの起源は古代エジプトとされているが、フランスでは13世紀頃から手のひらや手袋を使って球を打ち合うジュ・ド・ポームと呼ばれる遊戯があり、16世紀頃からラケットが使われるようになった。サーバーが 「Tenez」(球を取りなさい)と言うことから 「テニス」という言葉が生まれたとか。テニスは英国に伝わって発展し1874年にほぼ現在のルールが生まれ、3年後には第1回ウィンブルドン選手権が開催された。
バボラはもともとストリング(ガット/厳密には天然素材のみガットと呼ぶ)の専門メーカー。ピエール・バボラ氏が1875年に家畜の腸を加工して、ソーセージ等の皮、手術糸、弦楽器の弦などを製造するバボラ&モニエ社を設立。英国人からの注文で、同年に羊の腸からテニスのガットを作り始めた。1955年にはナイロンストリングを開発。80年代はガット張り機も開発し、この機械とストリングは今も世界一を誇る。94年には外部技術者とともにラケットフレームを開発し、2000年代初めにはボール、シューズ(ミシュランと共同開発)の製造も開始、ウェアやバッグなど全テニス関連商品を手がけるようになった。ストリングと張り機以外は中国・アジアの企業に外注している。
本社のあるリヨン中心部から車で30分のコルバのストリング工場(2万4000m2)をミシェル・ロシェ生産部長が案内してくれた。ドイツ製の合成糸(ポリアミド、ポリエステル、ポリウレタン)を材料に、マルチフィラメントとモノフィラメントのストリングを製造。マルチなら10本程度の細いファイバー糸を、溶かしたポリウレタンで固着する。それを機械に通して撚(よ)りをかけ、再びポリウレタンで強化し、シリコンコーティングでなめらかにする。
「モノ」は直径1.25〜1.35㎜の1本のストリングに微妙な凹凸を付け、同様のコーティング工程が施される。マルチは柔軟性、モノは強い力と耐久性が特徴なのでプロ選手は後者を使うそうだ。工場は3交代制で月に350万mのストリングを生産する。
ラケットのパフォーマンスの5割はストリングと言われるほど品質は重要なので、工場内には強度や耐久性を検査するテスト室がある。ブルターニュの工場では牛の腸から作るナチュラルガットを製造し続けており、打球感のよさ、弾力性の高さで、高価ではあるが愛好者は多いそうだ。
バボラの強みはテニスクラブやプロ選手との付き合いが長く、使用者の要望を聞いて製品の品質・パフォーマンスを向上させる新商品開発力。輸出は80%。欧州、米、中国など140ヵ国に輸出し、日本は第3の市場だという。バドミントンとパデルも含めラケットスポーツ総合メーカー世界一を目指している。(し)
www.babolat.com/fr
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