
この暴力に対して親、生徒、教員らは怒りを募らせている。
パリ郊外の高校で9月下旬に始まった高校生の抗議運動は次第に全国に広がり、10月1日には全国の約4分の1の高校でデモや学校封鎖などの抗議運動に。暴力集団による放火や器物損壊がメディアで注目された一方、治安部隊の行き過ぎた暴力を問題視する声が上がっている。
考慮されない高校生の要求。
高校生の抗議運動は9月21日にパリ郊外クレテイユの高校で始まった。代替教員不足、学校看護師の不在、学校施設の老朽化、授業時間の長さなどの問題解決を求めて教員がストを始め、それに生徒が賛同して学校を封鎖。その動画がSNSで拡散され、この抗議運動は数日後にはパリ、リール、リヨン、マルセイユ、ナントなど全国の中・大都市に拡大。10月1日には全国約4000校のうち1027校でデモや学校封鎖(222件)などの抗議運動が起きた。2日も全国で735校が抗議運動を続けた。
治安部隊のなかには警棒、催涙ガス、擲(てき)弾(小型爆弾)、ゴム弾などを使用する者もおり、一方で、外部からデモにまぎれたとみられる暴力集団はバール、バット、火炎瓶などで武装し、バス停や店を破壊したり、ごみ箱や学校の建物に放火するなどの暴力行為を展開。警察は9月28日に164人、29日は440人、30日は625人、1日は1948人、2日は1747人を拘束したが、多くは暴行などの前歴のない高校生だった。SNSでは、警察らしき人物が顔を隠してものを警察に対して投げる映像も流れている。
内相の暴力容認
ニュニェーズ内相は30日に各県知事への通達で、「公的空間の破壊や暴力に対しては、治安回復のために(受けた暴力に)見合った力の使用は決して抑制されるべきではない」と、暴力を容認するような指示を出している。ルコルニュ首相やマクロン大統領は高校生の抗議運動は「服従しないフランス」党(LFI)や極左が扇動し、街中の暴力行為を促したとLFIを非難。LFI側はLFI議員がパリ郊外の高校の抗議デモの現場にいたこと、衝突が起こらないよう警察と生徒たちの間に立ち調停役を務めていることは認めるが、政府の「LFIが扇動した」という非難は根拠がないと反論した。
治安部隊の暴力も問題になっている。アムネスティ・インターナショナルによると、警官がパリ郊外で14歳の高校生に擲弾を発射し、あごに重傷を負わせたり、トゥールでは高校生がゴム弾銃で撃たれ目に重傷を負ったと、治安部隊の行き過ぎた暴力に警鐘を鳴らした。そうした警察の暴力から生徒を守るために、高校によっては教員らがデモをする生徒たちのそばに随行している。10月1日までに235人の生徒と教員が負傷。なお、内相は警官による高校生負傷事件3件を警察監察総監(IGPN)の調査に委ねたとした。
社会学者らによると、高校生の怒りは教員不足、学校看護師やソーシャルワーカーの不在、学校施設の老朽化(壁のはがれ、汚れたトイレなど)、大学入学振り分け制度「Parcoursup」などの問題から生じるとする。学歴がその後のキャリアにも大きく影響するフランスで、本来、社会階層を移動できる手段を得られるべき学校で社会階層が再生産されているという。とりわけ Parcoursup は移民系や下層階級など情報や知識の乏しい家庭の子にはわかりにくい制度になっており、不利に働くという。
この運動が盛り上がる最中、10月1日に政府が発表した来年度予算案では、緊縮予算のなか、教育予算は12億€増の640億€に。障害児のための支援人員は1300人増えるものの、正規教員は(生徒数減少のため)1588人削減となり、給与も据え置かれる教員の怒りを買っている。
運動の継続と、大学生、主要労組の加勢。
教育相は2日の高校生組合代表との会見で、代替教員の確保や授業時間編成を改善すると約束したが、高校生は具体策は得られなかったとし、6日にも教職員組合や大学生の組合とともにデモを呼びかけている。抗議の意思表示は高校生や教員の正当な権利であり、それは安全な状況で行使されるべきだろう。政府はまず生徒たちの不満に耳を傾け、真摯で具体的な回答をもたらしてもらいたいものだ(し)
