旅しながら、職能をみがく コンパニョナージュ。
「コンパニョン」という言葉を始めて聞いたのは、パリの手作りブーツ屋Clairvoyを取材したときだ。「うちはコンパニョンから人材を採用している。優秀だから」と言われ、「えっ、コンパニョンって何ですか?」と尋ねると、教育機関のようなものだとの答えだった。
調べてみると、各地の企業やアトリエを巡って修業する「Compagnonnage」という職業訓練制度があり、コンパニョンとは修業を終えて一人前の職人になった人のことだった。
その起源は中世にさかのぼる。シャルトル大聖堂のステンドグラスには草花柄の鉢巻きをつけた石工が働く姿が描かれており、この鉢巻きは後に石工コンパニョンが身につけたものに似ていることから、すでに13世紀に存在していた可能性がある。15世紀頃には石工、大工、靴職人、刃物職人などのコンパニョン結社が古文書に現れる。自らの利益を守る組合的なものに発展し、歴史の波にもまれて変遷しながら現代まで生き延び、今では国から職業訓練組織として認可されている。最近では、パリ・ノートルダム大聖堂の再建にあたって、「コンパニョンの数が足りない!」とメディアでも取り上げられた。
集団生活のなかで技能だけでなく規律や礼儀作法を身につけながら、それらを後輩に伝えていく。中世の親方のもとでの修業の精神が、形を変えて現代に生きている。コンパニョンたちに会いに行った。(し)
取材・文/児玉しおり