南仏セート、水辺の夏をさがしに。〈その4 – 枯れた漁村の情緒 ラ・ポワント・クールト〉

猫がたくさんのラ・ポワント・クールト。猫好きなブラッサンスやヴァルダが通ったのも頷ける。
猫がたくさんのラ・ポワント・クールト。猫好きなブラッサンスやヴァルダが通ったのも頷ける。

 セート北部の漁村、ラ・ポワント・クールト。国鉄の駅の裏手に位置し、線路や国道のガードを超えた先にある。標識はないが、地図を見ながら進めば、わりと簡単にたどり着けるはず。セートの他の地区とは異質の風情が広がるだろう。目の前は地中海ではなく、オクシタニー地域圏最大の湖、トー湖だ。小さな灯台の周りには小舟や漁網がたゆたう。碁盤目状の小径にはパステルカラー調の家々。猫たちは陽だまりで井戸端会議。釣り糸を垂らす釣り人にもすれ違う。

 19世紀半ば、この地区は鉄道の到来でセートの他のエリアから切り離された。漁師らは作業道具を水辺の小屋にストックしていたが、やがて家族と移り住み、漁村を形成していった。住民はこの地に愛着があるため、「Sétoisセトワ(セート住人)」より、「Pointus ポワンチュ(ラ・ポワント・クールト住人)」と呼ばれることを好む。

ヴァルダ通りにはヴァルダの顔も。
Florian©tourismesete.com
ヴァルダ通りにはヴァルダの顔も。
Florian©tourismesete.com

 ラ・ポワント・クールトにゆかりの芸術家といえば、ジョルジュ・ブラッサンスとアニエス・ヴァルダ。ブラッサンスは庶民的な魅力の漁村を愛し、頻繁に訪れたという。ヴァルダは長編デビュー作のタイトルが『ラ・ポワント・クールト』(1954)。少ない予算とスタッフで屋外撮影を敢行した本作は、「偉大なカリヨン(鐘楼。ここでは革新的な映画運動ヌーヴェル・ヴァーグを指す)の最初の鐘の音」と形容された。倦怠期の若いカップルと漁民の日常を、並行して物語る実験的な構成の作品で、カップル役はプロの俳優、シルヴィア・モンフォールとフィリップ・ノワレを起用。一方、漁民は本物のポワンチュたちが家族総出で出演した。住民側の主役の男性はジュットの選手という設定で、劇中では試合も見られる。

現地で映画『ラ・ポワント・クールト 』の出演者や家族に出会えた。ジェラールさん(右から2人目)は5歳の時に出演。
現地で映画『ラ・ポワント・クールト 』の出演者や家族に出会えた。ジェラールさん(右から2人目)は5歳の時に出演。

 ヴァルダはこの地を貧困に苦しむ漁村として描いた。その暗い描写が気に入らない住民もいたが、映画がこの地を有名にしたことは疑いない。ポワンチュたちはヴァルダに感謝の気持ちを表すため、彼女の名を冠した道(Traverse Agnès Varda)を誕生させ、2019年にはこの道の壁に彼女の顔や作品をモチーフとした絵を描かせた。

 半世紀前には100人ほどいた漁師も、現在は片手で数えるほど。それでも岬の先まで足を伸ばせば、時を封じ込めたような枯れた漁村の情緒が残る。

 セートの中心地からは観光船が出ており、水上からの眺めも楽しい。湖上に掘っ建て小屋が立ち並ぶ様は、遠いアジアの水上集落を思わせ、また別の表情が楽しめる。(瑞)

ミストラル河岸通りでは、風に洗濯物がはためく。
ミストラル河岸通りでは、風に洗濯物がはためく。

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■ 運河クルーズ
セート・クロワジエール社が3コースを用意。「Le Canauxrama」は45分で運河を通りトー湖に出て、ラ・ポワント・クールトを水上から見るコース。出発はGénéral Durand河岸。大人10€/3~12歳6€。他にも海に出て「海辺の墓地」や浜辺を眺める「Promenades en Mer」コース(1時間で大人12€/3~12歳8€)、トー湖に出てカキやムール貝の養殖などを水中から見られる「L’Etang deThau」がある。
www.sete-croisieres.com

■ イワシのバーベキュー・パーティー
7月と8月の毎週木曜の夜20h~23hは「Sardinade – Barbecue
Party」。防波堤で開催されるイワシのバーベキュー・パーティーでお腹いっぱい食べよう。船でのみアクセス可。大人25€/3~12歳10€。要予約。電話04.6746.0046または、Général Durand河岸のla Savonnerie橋付近の船AQUARIUS号で直接予約を。
www.sete-croisieres.com/pages/autres-prestations/sardinade-barbecue-party.html

■ サン・ルイ灯台
高さ33.5 m。階段を126段登ればセート港や海、旧市街が一望できる。海側の壁にはヴァレリーの詩「ヴィーナスの誕生」の一節が刻まれている。7月と8月は毎日10h-12h30/15h30-18h30。入場料3.50€/12歳未満は無料。
Phare Saint Louis sur le Môle Saint Louis, 34200 Sète
www.tourisme-sete.com/visite-du-phare-saint-louis.html

サン・ルイ灯台

■モデスト・アート美術館
南仏生まれの芸術家、エルヴェ・ディローザとベルナール・ベリュが創設。食品の空き箱ら日常の身近な品を展示するなど、自由な感性で芸術をとらえる。ベリュ氏は「芸術は感情的なショック」と定義。
Musée International des Arts Modestes(MIAM) :
23 quai Maréchal de Lattre de Tassigny 34200 Sète
4〜9月:火〜日9h30-19h。月曜はガイド付き見学のみ。
10〜3月:月休、9h30-12h/14h-18h。大人5.60€/18歳以下・学生2.60€/10歳未満は無料。https://miam.org

👉セート特集、こちらもあわせてお読みください。

南仏セート、水辺の夏を探しに。
その1− セートの夏は「ジュット」!
その2– ヴァレリーとブラッサンス。
その3 – 海の幸好きには、たまらない町。


 

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