Justin Taylor “Bach & L’Italie”
若き日のヨハン・セバスティアン・バッハは、イタリアの協奏曲のコンサートを聴いたり、数多くの楽譜に触れたりして、ドイツ音楽にはない、優雅で歌心にあふれる音楽に魅了された。ヴィヴァルディの協奏曲を20曲以上編曲しつつ、それを自分のものにしていった。そんなバッハのイタリア性を発見したい人には、今秋リリースされた、クラヴサン奏者ジュスタン・テイラーのソロによる『Bach & l’Italie』。
テイラーは現在31歳。2015年のブルージュ国際古楽コンクール・クラヴサン部門で優勝し、脚光をあびる。その後リリースされたフォルクレやラモーのソロアルバムも高く評価された。室内アンサンブル「ル・コンソート」のメンバーとしてヴィヴァルディなどを録音していて、この企画に打ってつけの音楽家だ。
マルチェッロのオーボエ協奏曲を編曲したBWV974のアダージョ*では、切なさがテイラーの指先でふるえている。名曲イタリア協奏曲では、軽快でしなやかな第1楽章、夢見るようなアンダンテ、各声部があざやかに対話するプレストと、各楽章の性格がみごとに浮きあがる。五つ星では足りない傑作。録音もクラヴサンの弱音が美しく、ノエルのプレゼントが決まった。(真)
Alpha/18euro前後。