フランス製のランプなら「ジエルデ (Jieldé)」と、フランス人の友人から聞いたのは去年のこと。インテリアデザインに凝る人たちにファンが多く、コレクターもいるとか…。ネットで調べると、重厚なデザインがアンティークっぽくていい感じだ。全部手作りということで、さっそくリヨン郊外サン・プリエスト市に出かけた。同市内から2013年に引っ越してきた本社工場(1500平米)を案内してくれたのは、販売部長のオリヴィエ・リナレスさんだ。
ジエルデは機械技師だったジャン=ルイ・ドメック氏が、工作機械の作業の手元を照らすために360度回転し、配線コードが磨耗しない機能的なランプを1950年に開発したのが始まり。従来の作業用回転ランプでは、ランプの向きを変えるたびにアーム部を通る電気コードがジョイント部で磨耗して切れやすかった。そこで、ジョイント部に2つの金属リングをかみ合わせることで、この部分からコードをなくした。これを自分の頭文字JLDをとって「ジエルデ」商標で登録した作業用ランプ 「STANDARD」(現在のLOFT)が、今でもジエルデの看板商品だ。シンプルで頑丈で機能的なランプは精密作業や製図などの現場で人気を博した。ところが、工場の減少や機械化で作業用ランプの需要は減り、90年代からは機能的でシンプルなデザインがおしゃれなインテリアを好む一般の人に受けた。現在、ジエルデのランプは一般向けが98%だ。LOFTに加えて、2003年以降はLOFT の小型版SIGNAL、壁取り付けタイプのLAK、つりランプやフロアランプも加わった。
広い工場(というよりアトリエ)には従業員がぽつりぽつりといて、それぞれの作業に専念している。鋼鉄やアルミ製の笠、アーム、土台部分は別の場所にある自社工場で鋳造する。笠の塗装を見たが、フックに並んでかけられた笠に手作業でひとつひとつ塗料をスプレーしていた。カタログにある52色のほか、15個以上なら注文色にも応じる。電球、ソケット(陶器)、コードなどは外注だが、組み立てはすべて手作業だ。アームにコードを通しながら笠を固定する人、電線をハンダ付けする人、ジョイント部を固定する人など男女半々くらいの人がもくもくと手を動かしている。これだけ人の手をかければ高価なのもうなずける。頑丈なので20年はもつが、販売店の領収書があれば、修理もしてくれるそうだ。
販売は国内では295店の販売網を持つ。販売の4割はホテルやカフェなどで、カラーやスタイルを統一したインテリアにするために400個のランプを一括受注することもある。今では6割が輸出でカナダ、ブラジル、日本など30ヵ国に販売。新製品も4〜5年ごとに出しつつ、メイド・イン・フランスと手作りにこだわる。業績が悪化したジエルデ社を1995年に創業者一家から買い取ったフィリップ・ベリエ社長は「小さな会社であり続けたい」と、考えているそうだ。(し)