セーヌ川に浮かぶセガン島に、名和晃平の新作大型彫刻作品「Ether(Equality)」が設置・公開。
オー・ド・セーヌ県のセガン島の再開発計画の一環として、「égalité(平等)」をテーマとした大型アート作品の国際コンペティションが行われ、京都をベースに先鋭的な空間表現を行う名和晃平氏と、フランスのデジタルアートを牽引するDANAE.IOがタッグを組んで本作品を提案し、選出された。
本日6月28日に行われたオープニングセレモニーには名和氏本人も出席し、作品に込められた思いや、制作に尽力したチームへの感謝の気持ちを語った。さらに恩師である野村仁の宇宙の現象を視覚化する「コスミック・センシビリティ」から受けた影響にも言及した。
12角形をベースとした多面体で構成されたこの作品は、水の雫(しずく)をモチーフに構成されている。地球上のすべての物体に平等に作用する重力、つまりこの宇宙のあらゆる場所や物体に作用する万有引力という普遍的な法則と、地球表面の約2/3を覆う生命の根源である水をコンセプトとして捉えて具現化された。
水の雫が落ちる時に現れる水の姿、それは重力と水の表面張力がバランスを取り現れる形であり、それらを積み重ねて表現されたこの作品は、調和とバランスを象徴的に表現している。
夕暮れ時の空の色、そしてセーヌ川に反射する光、それらから想起された薄いシルバーピンクに彩られ、見る角度や光の加減により実に多様な色彩を放つ。
また、地表の高さが25メートルになるこの作品の設置にあたっては、並々ならぬ労力が費やされている。セーヌ川の増水によりこのセガン島は4メートルの高さまで水没する可能性があるので、それにも耐えられる構造となっている。内部には直径30センチのポールが、地下22メートルの深さまで打ち込まれている、あたかも樹木が地下に根を深く張り、地表の幹を支えているようだ。
セガン島には坂茂氏が設計した複合文化施設「ラ・セーヌ・ミュージカル」が2017年に完成しており、この作品はそのラ・セーヌ・ミュージカルとの調和が素晴らしく、セガン島に特別な引力が発生したように感じられる。(高)