最も有名な蒐集品は、美術館の2階に設置された高さ4.4mの巨大な阿弥陀像。目黒の蟠龍寺(ばんりゅうじ)で焼け出された仏像を500両で買い、解体して輸送し、バルベディエンヌ鋳造所で組み立てた。ちなみにチェルヌスキとデュレは、鎌倉と奈良の大仏を見ている。
日本、中国、モンゴル、ジャワ島、セイロン、インドと、15カ月に及ぶ東洋の旅先から送られた美術品は9百箱、約5千点。チェルヌスキは帰国後すぐの1873-74年、「産業館」*の東洋展覧会でこのコレクションを展示した。そして、コレクションに囲まれて暮らせるように、モンソー公園の隣に新古典様式の邸宅を建てさせる。主人の死後、1898年に美術館として公開された館は、折しもジャポニスム熱に浮かされるパリで、その拠点のひとつとなった。チェルヌスキは生前、邸宅で仮面舞踏会を頻繁に催した。日本美術研究の先駆者ルイ・ゴンス(1883年に『日本美術』2巻を発行)が林忠正と共に仮装し、お面をつけて訪れたという記述が残っている。
チェルヌスキ没後、美術館はとりわけ中国美術コレクション(先史時代から近代・現代まで)を充実させた。虎卣(こゆう)と呼ばれる青銅器時代の「雌虎」や、漢時代のやきものなどの傑作を常設展で見られる。
「チェルヌスキは先見の明がある、並外れた人物でした。コレクションを多くの人と分かち合おうとしたところに、彼の開放的なエスプリが表れています」とモスカティエッロさん。コレクションにはまだ紹介されていない宝物がたくさんあるというから、リニューアル後の展示や企画展が楽しみだ。(飛)
*1855年フランス初の万博の際に会場として建造された建物。
チェルヌスキ美術館・日本美術責任者、マヌエラ・モスカティエッロさんのインタビューもあわせてお読み下さい。
Musée Cernuschi
Adresse : 7 av. Vélasquez, 75008 ParisTEL : 10h-18h 月休 (1/1,12/25休) 特別展9€/7€
アクセス : M°Villiers
URL : www.cernuschi.paris.fr
12月10日から14日まで、作品替えの ため休館。2019年4月から数カ月間 リニューアルのため休館。2020年 始め再オープン。