日本美術への情熱を みんなと分かち合いたい。

Manuela Moscatielloさん
パリ市立チェルヌスキ美術館学芸員・日本美術責任者

 この秋と冬は若冲の「動植綵絵(さいえ)」につづき、俵屋宗達の「風神雷神図屏風」など、琳派の傑作がパリで見られる!…「ジャポニスム2018」の目玉といえる展覧会ふたつをフランス側で企画した女性にぜひ会いたいと、チェルヌスキ美術館(フランス語式に発音するとセルヌシ)に足を運んだ。「私はいつでも自分の情熱を追って生きてきました」と言うマヌエラ・モスカティエッロさんは、ナポリで生まれたイタリア人だ。

 最初の情熱は19世紀のフランス美術だった。ボローニャ大学で美術史を学んでいるとき、大学の浮世絵コレクションに魅せられる。折しも長期の日本滞在から帰国した素晴らしい先生と出会い、日本美術にますます傾倒。ジャポニスムと、19世紀日欧の交流にも着目した。

日本に留学した後、パリ第4大学で、19世紀後半のパリで活躍したイタリア人画家のジャポニスムについて研究。博士論文『ジュゼッペ・デ・ニッティスのジャポニスム』は、2011年に日本のジャポニスム学会賞を獲得した。

「デ・ニッティスは1878年のパリ万博のとき、マネやドガと共に、起立(きりゅう)工商会社が送った日本画家、渡辺省亭(せいてい)による日本画の実演を見ています。そして、截金(きりがね)など日本の技術を真似ようと努力したところが面白い」と語る。

 モスカティエッロさんはその後、若冲や北斎、神坂雪佳の図版本(ファクシミリ)の編集・出版に携わった(ピキエ出版)。若冲と雪佳の本はフランスで初めてというから、情熱の賜物だろう。2016年7月、パリ市立チェルヌスキ美術館の日本担当学芸員に就任する。「雪佳の本の評判がよかったので、ジャポニスム2018に向けて琳派の継承者、雪佳の回顧展をやりたいと提案したら、琳派の企画展《京都の秘宝》全体と、プチ・パレの若冲展も任されることになりました」。

神坂雪佳(1866-1942)は琳派20世紀の後継者。光琳と同じ「燕子花図屏風」を1920年から40年にかけて描いた。

 国宝や重要文化財を含む作品群を見せるふたつの企画展の実現までには、大変な苦労があっただろうと想像がつく。若冲はフランスで知名度は低かったが、展示は大好評。「琳派もフランスであまり知られていませんが、デザイン的な琳派の装飾スタイルは理解しやすいと思います。日本美術への自分の情熱をより多くの人と分ち合いたい」とモスカティエッロさんは目を輝かせる。

 フランス初の琳派展では、スタイルの誕生(光悦・宗達)から尾形光琳・乾山、継承者たち(渡辺始興、深江蘆舟、中村芳中)、20世紀の雪佳までの作品を紹介。琳派の様式やモチーフが世紀を越えていかに引き継がれ、発展したかを示す。琳派はすぐれて日本的な美学と感性だが、師弟関係ではなく、美的・精神的な共感とオマージュによる継承である点が興味深い、とモスカティエッロさんは強調する。

松、波、梅の木、草花のモチーフや古典文学のテーマ、たらしこみなどの技術がそれぞれ、時代と絵師の個性によって再創造されていく。現代の金箔制作と、雪佳の版画制作をビデオで見せるコーナーも展示に加え、技術もわかりやすく紹介する。「純化されたスタイルの琳派の作品を見ると、私は心が静まります。精神衛生的な効果もあるので、琳派の鑑賞をみなさんにお薦めします」と、モスカティエッロさんは茶目っ気たっぷりに結んだ。(飛)

チェルヌスキ美術館と、その創設者アンリ・チェルヌスキの波瀾に満ちた人生を振り返る記事「アンリ・チェルヌスキ — 非凡な人生とコレクション」もあわせてお読みください。

■ Trésors de Kyoto - Trois siècles de création Rinpa –
《京都の宝-琳派300年の創造》
2018年10月26日〜2019年1月27日


Musée Cernuschi

Adresse : 7 avenue Vélasquez, 75008 Paris , France
TEL : 01 53 96 21 50
アクセス : Villiers / Monceau
URL : www.cernuschi.paris.fr/ja/node/1699
10/26 〜2019/01/27。月休。10h-18h。金曜は21hまで。