「北欧のフェルメール」と評されるヴィルヘルム・ハマスホイ(1864−1916)はデンマークの画家。友人の妹と結婚し、子どもはなく、コペンハーゲンで波風のない人生を送った彼が描いたのは自宅の室内や身近な人々の肖像、風景だ。
親密な雰囲気かと思いきや、絵の中の人々の視線はバラバラで互いのコミュニケーションがない。友人4人と弟がテーブルを囲む絵は、それゆえ見る人の心をざわめかせる。室内に一人佇(たたず)む女性は、ほとんど後ろ向きかうつむき加減で表情がわからない。人物は皆、自分の内面に気持ちが向いているように見える。どこか非現実的な、魅力的な作品だ。
後ろ向きの人物はカスパー・ダーヴィト・フリードリヒを、室内に入り込む光の扱いと絵の中の不思議な静けさはエドワード・ホッパーを思わせる。写真的な要素も顕著だ。室内の弟を描いた絵(写真)では、焦点は白い椅子にあり、あとはぼやけている。
展覧会をハシゴして最後にここに来たが、見終わった後、不思議なことに体の疲れが取れていた。ハマスホイの絵には癒し効果があるようだ。見ながら瞑想状態に陥っていたのかもしれない。平日でも長蛇の列ができているが、並んで待っても見る価値がある展覧会だ。7月22日まで。(羽)
学芸員の説明つきで見学したい方は、こちらから予約。
Musée Jacquemart-André
Adresse : 158 bd Haussmann, 75008 Parisアクセス : M°Miromesnil 無休、 10h-18h。月曜は20h30まで。 www.musee-jacquemart-andre.com
URL : http://www.musee-jacquemart-andre.com
無休、 10h-18h。月曜は20h30まで。