
フランス料理には、ノルマンディー風とかボルドー風とか、地方のあるいは町の名前がつく料理が多い。その地方、町ならではの味わいを持った料理のことを意味するのだが、そんな料理を一つ一つマスターして、料理のレパートリーを広げたいものだ。
ノルマンディー風 à la normandeには、この地方名産の生クリームがたっぷり入ったソースが活躍する。つくり方はむずかしくない。柔らかな風味の子牛肉や鶏肉との相性は申し分なく、マッシュルームを加えたりもする。シチメンチョウ肉のノルマンディー風は紹介ずみだ。ヒラメなど白身魚のおろし身を蒸したり、焼いたりするときにも極上のソースになるだろう。ノルマンディーはリンゴの名産地でもあるから、シードル酒をつかった料理をさすことにもなる。サバはまだ安く手に入る魚だから、そのシードル煮はぜひおぼえたいものだ。
ボルドー風 à la bordelaiseには、もちろん白や赤のワインが欠かせない。サーロインfaux-filetを焼いて赤ワインを煮詰めたソースを添えれば、最高のステーキだ。南からボルドーまで北上するとオリーブ油はほとんど姿を消し、バターの世界になり、ニンニクだけでなくエシャロットの風味が大切にされる。セープ茸のボルドー風は、その代表的なものだ。
バスク風 à la basquaiseは、赤ピーマンやトマトの甘み、ニンニクの香り、バイヨン産生ハムの味わい、エスプレット産トウガラシの辛みなどがとけ合い、ぜいたくな味わいになる。ピーマンとトマトの煮込みピペラード、エスプレット産トウガラシ風味豊かな辛さが生きている子牛肉の煮込みアショワ。バスク風小イカ料理は、長時間煮込まれてイカのうまみをたっぷり吸ったソースのおいしさにびっくりする。
南仏の太陽が感じられるような料理がプロヴァンス風à la provençale。3月1日号で紹介したばかりのプロヴァンス風牛肉の赤ワイン煮、プロヴァンス風タイの包み焼、ティアン tianと呼ばれるトマトやクルジェットのオーブン焼き、プロヴァンス風カエルのから揚げ…、いずれも、オリーブ油、ニンニク、黒オリーブ、トマトなどが入り、タイムやバジリコなどの香草も一役買うことが多い。ニース風になるとニース風サラダにしろピサラディ―エールにしり、アンチョビーやニース産の小さめのニース産黒オリーブが欠かせない(コラム参照)。
以上にあげた料理を郷土料理と片づけてはいけない。子牛肉のノルマンディ―風も、ボルド―風赤ワインソースも、南仏風野菜の煮込みラタトゥイユも、ニース風サラダもフランス中に広まり、どこの家庭でもつくられるようになっている。(真)

À l’anglaise, à l’américaine
英国風 à l’anglaiseといわれる料理は、野菜(ジャガイモや芽キャベツなど)や肉(豚肉や子羊肉)を水煮したりポシェするシンプルなものをさす。とかくフランス人は英国料理を軽蔑しがちで、そんな考え方から生まれた命名かもしれない。卵黄がたっぷり入るカスタードソースは crème anglaise といわれるが、英国の主婦はカスタードの粉末 custard powder(卵黄0%!)を牛乳でといてすませることが多い。
アメリカ風は、homard à l’américaine のごとく、ロブスターの調理法。バターやトマト、白ワインでつくったベースにコニャックで香りづけし、ロブスターのコライユ(みそ)をつなぎにしたソースが添えられる。

Salade niçoise
パリのカフェのメニューにも載っていたりするニース風サラダは、ボリュームがあるのでこれだけで一食になる。欠かせないのは、缶詰の油漬けのツナ、小さく分けたトマト、歯ごたえが残るようにゆで上げたサヤインゲンやソラマメ、ゆで卵、アンチョビー、黒オリーブ (小さめのニース産ならベスト)。ほかに、輪切りにしたキュウリやゆでたジャガイモ、アルティショーの芯などを加えてもうまい。忘れてならないのは、ドレッシングにはかならずオリーブ油を使うこと!

Pissaladière
わが家のパーティーに欠かせないのが、ニース名物のピサラディエールだ。ピッツァ生地は自分でつくればベストなのだが(ovninavi.com/pizza-regina/)、面倒なら市販のものをつかってもいい。まずは玉ネギ中4、5個をせん切りにし、ごく弱火で柔らかくなるまでいため、アンチョビーペーストを大さじ
2杯ほど混ぜ入れ、冷ましておく。天板にクッキングシートを敷き、ピッツァ生地を広げ、玉ネギをまんべんなく広げる。その上に油漬けのアンチョビーと黒オリーブをバランスよく置き、180度で熱くなっているオーブンに入れる。20分ほどで生地にきれいな焼き色がついたらでき上がり。大きなまな板の上にうつしてテーブルに出し、つまみやすいように小さめに切り分ける。ビールや白ワイン、パスティスといっしょにどうぞ。
