クレタ島生まれのエル・グレコ(1541-1614)の知られざる生涯と作風の変遷を見せる、小規模ながら見応えがある展覧会だ。イコン制作を学んだが、イタリアで画家になる野心を持ちヴェネチアに移住。当時の技法を取り入れたが、コネのない異邦人には職がなくローマに移る。ここでも注文絵画市場は在住の画家たちに占められ、入り込む余地はなかった。肖像画で評判を取ったが常客は見つからず、フェリペ2世が画家を探していると聞きスペインに出発。スペイン語で「エル・グレコ(ギリシャ人)」と呼ばれる大画家になったのは、トレドに移り住んでからだ。トレドでは多くの注文をこなしたが、それまで仕事にありつけなかったのは傲慢な性格のせいでもあった。スペイン王の庇護を失ったのも王の意向を汲んだ絵を描かなかったからだという。浮世離れした細長い体の人物や陶酔した表情の聖人といった作品からは想像できない、我が道を行く、クセの強い画家の姿が浮かび上がる。(羽)
Grand Palais
Adresse : 3 av. Winston Churchill, 75008 Paris2月10日(月)まで。火休。13€/9€。