6月6~9日に27加盟国で実施された欧州議会議員選挙(定員720人)で、まだ最終的な結果は出ていないものの、中道右派「欧州人民党グループ(EPP)」(下の一覧表ではPPE)が最大勢力を維持する見込みだ。極右勢力の伸長により、今後のEUの政策にどう影響していくかも気になるところだ。
EPPは改選前の176から186に議席を伸ばした。第2勢力である社会民主進歩同盟(S&D)は改選前とほぼ同じ135議席。中道の欧州刷新(Renew)は102議席から79議席に、環境保護派の欧州緑グループ(Greens/EFA)も72議席から53議席に後退した。急進左派は選挙前とほぼ同じ、36議席をキープした。
極右思想に近い欧州保守改革グループ(ECR/欧州懐疑主義)および極右の「アイデンティティと民主主義」(ID)を合わせて微増の131議席だが、そのIDから除籍された「独のための選択肢(AfD)」党、そしてハンガリーのオルバン首相の党、ポーランドの極右系の議員を入れると165議席と、EPPに次ぐ勢力になる。
フランスの国民連合(RN)が得票率トップの大躍進で30議席、イタリアのメローニ首相の「イタリアの同胞」党が24議席、さらにオーストリア、ポーランドなど以前から極右の強い国、ベルギー、オランダなどでは今回の選挙で極右が伸びて、全体的に極右が伸長した。
これまでは社会党系のS&Dや中道Renewと手を組んできたEPPが、これまで通り主導権を握ってEUの政策を引っ張っていくことになるとみられる。だが、今後は課題によっては極右と手を組む可能性もなきにしもあらずだ。EU委員長続投を目指すEPP出身のフォン・デア・ライエン委員長は初期こそ中道や左派の支持を受けて思い切ったグリーンディール政策を推進してきたが、ウクライナ戦争など国際情勢の変化にともない、近年は農薬の使用延長など環境保護政策を後退させ、移民・難民規制の強化策を打ち出してきている。明確なEUの方向性が見えにくくなっている今、新議会、新委員会体制になってどういう方向に向かうのか注目していきたい。(し)