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☞バルニエ新首相やっと組閣。右寄り内閣に。
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バルニエ首相は10月1日、国民議会で1時間23分にわたる施政方針演説を行なった。議会第1勢力の左派連合、不信任案採否のカギを握る極右の両方に配慮したような内容で、首相自身も「対話と妥協の精神」を強調した。信任投票はなかった。
ルメール前経済相とマクロン大統領が求めていた財政赤字減らしについては、首相は2027年に国内総生産(GDP)に対する財政赤字の割合を3%(現在は約7%)は無理と判断し、2025年にGDPの5%に、29年には3%にすることを目標とし、400億€規模の歳出の削減と、大企業や富裕層への200億€の課税を提案した。歳出削減方法の詳細は明らかにされなかったが、首相府管轄の機関などの合理化、マクロン大統領が使い過ぎと批判されたコンサルタント会社への業務委託の減少などとみられる。また、法定最低賃金を11月から2%引き上げて税引き後の月額を現行の1398€から1426€にする。昨年から導入された批判の多い年金制度改革および失業給付制度改革を、各制度の財政均衡は順守しながらも、労使双方との交渉により一部見直す方針を示した。不法滞在罪の復活、不法滞在者や難民への国家医療支援の廃止などルタイヨー内相がすでに強硬な政策を提案している移民問題については、難民申請手続きのさらなる効率化、不法移民の勾留期間の延長などを提案。また、一部の左派や極右の国民連合(RN)がかねてから求めていた総選挙への比例代表制導入についても検討するとした。なお、ニューカレドニアの暴動の原因となった、選挙権拡大のための法改正については当分の間、両院合同議会にはかけないとした。
「服従しないフランス」党(LFI)党員は首相の演説が始まると、選挙人カードを振りかざし、7月の総選挙の結果を反映していない組閣に改めて抗議の意を示した。左派連合の新人民戦線(NFP)はバルニエ内閣の不信任決議案を施政方針演説直後に出す意向だったが、単独での可決は無理なこともあり、来週にずれ込みそうだ。
RNは今回左派が出す予定の内閣不信任案は支持しない意向をすでに明らかにしている。首相演説に対し、ルペン国民議会RN会派会長は「(首相の)礼儀正しさの感覚」を評価すると発言。バルニエ首相は欧州国境沿岸警備機関(Frontex)の強化や、アルジェリア人移民受け入れ体制に関する1968年協定の見直しなど移民対策強化をほのめかしているが、ルペン氏は新たな移民規制法の来年第1四半期の議会提出、総選挙への比例代表制導入、中低所得者層への減税といった3つの条件を掲げて「(首相に)チャンスを与える」としている。バルニエ内閣の今後の政権運営がRNに注視されていることは間違いないようだ。(し)