5月6日、新型コロナウイルスで約130万人が打撃を受けたとされる文化芸術分野について、政府が支援策を発表した。
まず同日午前、マクロン大統領はフランク・リステール文化大臣とともに、文化芸術分野のプロたちとビデオ会議の場を設置。映画監督のエリック・トレダノとオリヴィエ・ナカシュ、女優のサンドリーヌ・キベルラン、作家のオレリアン・ベランジェ、劇場ディレクターのスタニスラス・ノルデ、ラップ歌手のアブデル・マリックら、音楽、映画、演劇、ダンス、本などの分野で活躍するプロ12人と意見交換をした。その会談後に大統領は国民に向け、具体的な支援策を発表している。内容は以下の通り。
「アンテルミタン・デュ・スペクタクル」制度への特別措置
芸術分野の不定期労働者が、年間507時間働くと仕事のない時も手当が享受できる「アンテルミタン・デュ・スペクタクル」制度に関して、2021年8月末まで失業保険の保証期間を延長する。コロナ禍ですでに受給の条件は緩和されていたが、さらに権利が1年延長された形に。現在この制度を享受する労働者は約11万人。8月末まで大規模な音楽祭や演劇祭が中止勧告を受けたことで、多くの労働契約が白紙となり、不安視されていた。
ただし、この措置について大統領は、「おそらく実際に使う必要はないかもしれない」などと補足。アーティストや技術者に対し、書き入れ時の夏に大きなフェスティバルが開催できぬ代わりに、子供たちを集めた文化芸術の学びのプログラムを学校と協働し立ち上げることで、政府が芸術分野のフリーランスに仕事を与えたいとした。
撮影に対する「臨時補償基金」創設
外出禁止措置以降、急遽中止や延期となった映画やドラマ撮影に対する補償のための基金を創設する。通常、映画などの撮影には保険会社から補償があるが、新型コロナウイルスに関しては保険が使えないということで、業界関係者から不安の声が高まっていた。撮影は6月上旬から徐々に再開したい考え。
芸術分野に従事する若者へ政府仕事の発注
主に30歳未満の芸術関係者に向け、芸術関係の大規模なプログラムを発注するとした。内容は工芸、舞台芸術、文学など多岐に渡る。これまでにないシーズンを発明するという野心とともに、芸術分野から忘れられていた観客を発掘するものになるという。
外国のSVODプラットフォームに出資義務
自宅待機中に視聴者を増やしたネットフリックス、ディズニー+、Amazonプライム・ビデオ、アップルTVら外国のSVODプラットフォームに対し、フランスおよびヨーロッパの映像作品への出資を義務化させる。
(ただし、ネットフリックスは4月初旬にフランスのアンテルミタン・デュ・スペクタクルの技術者やアーティストを救うため、100万ユーロ規模の独自の緊急基金創設を発表しており(世界で1億ドル規模)、仏政府よりよほど積極的に助けているとも言える)
自由業者らが使える基金の確認
文化セクターで働く自由業者や TPE(Très Petites
Entreprises=10人未満の零細企業)は、政府が用意する70億ユーロ規模の連帯基金に受給資格があることを確認。
さて、フランスでは5月11日から、いよいよ自宅待機措置が段階的に解除される。大統領は感染の予防策を徹底しながらも、「クリエーションの場を復活させるべき」と強調。混雑を起こさない限りは、小規模の美術館、図書館、ギャラリー、CDショップなどは再開予定。一方、映画館や劇場の再開はまだ先(5月末から6月頭に具体的な指示が出される予定)となるが、劇場に関しては、5月11日の段階で「稽古を始めるべき」とした。(瑞)