仕事あれこれ
ホームセンターで資材も道具も揃う今とは違って、何でも一から作らないといけない中世の築城現場。 どの仕事を省いても現場は成り立たない。築城に関係するたくさんの仕事のなかからいくつかご紹介。
[石]
石切場から石を切り出す人carrier、モルタルを作る人gâcheur、ここでは普段聞かない職業名に出会う。石工でも形を整えたり装飾を施す人はtailleur de pierre、石を積むのはmaçonなど。石工は組合を作り、手当ても大工charpentierと並び 他の職人より比較的よかった。全国的に大聖堂や城塞が次々と建てられた13世紀、彼らは待遇が悪ければ集団で交渉をし、気に入らなければ別の現場へと移るほど需要が高かった。
[火]
鍛冶職人がいないと工具が作れない。石切場で固い石を割れば道具も壊れるから、溶かして釘など別の物を作ったりもする。鉄分の多い石を焼いて製鉄するのは2週間に一回くらい。運がよければ見られるかもしれない。
[水]
城が包囲された時の水の蓄えも必要だ。中庭に井戸、塔の中に貯水槽がある。2007年にジュラ地方のTGV建設現場から水車の板が出土した。ゲドロンでは2012年に11~12世紀の水車がどのようなものだったのか実験しながら究明し、水車を作り、堅い石で臼を造った。今は1日に10キロの麦を挽けるまでになりパンを焼いているが、夏は猛暑で川が干上がり、水車は止まってしまった。
[木]
屋根の骨組みを作るcharpentierは、水車を作り、工事現場の足場を組んだり、高いところへ資材を持ち上げる中世のクレーンも作る。クレーンは 「リス籠 cage à écureuil」と呼ばれ、輪の中に人が入って歩けば輪が回転し、2輪2人で600kgほどの資材を持ち上げられる。ゲドロンの森で築城に必要なナラ材が調達できる。屋根の骨組みには曲がった木なども必要になる。伐採して間もない青い丸太を角材にする職人はéquarrisseur。
[土]
建設を始めた当初は、雨が降ると地面がぬかるんだため、陶芸家が排水管を焼いた。陶芸家にとっても中世の排水管を焼くなど初めての経験だ。とはいえ、まずは土を成形する轆轤(ろくろ)作り。防水にするには1000℃以上で焼かないといけないから、(その前に窯を形成するレンガを焼いて)高温に耐える窯も造った 。