稲垣信也さん(51歳)
観光客でにぎわうモンマルトルも、一本裏道へ入ると住宅街になる。ひっそり静かなトロワ・フレール通りで、ひときわ人気を集めるブーランジュリーが、稲垣信也さんの営むShinya Pain。パン作りから販売までを、すべて一人でこなす。粉はすべて農家製のビオ、酵母も野生酵母または自分で起こした天然酵母のみを使用するこだわりだ。
稲垣さんの渡仏は20年ほど前。日本でも天然酵母でパンを焼く職人だったが、さらに技術と知識を深めるためにフランスへ。人づてで知り合ったノルマンディーやグルノーブル近くのビオのブーランジュリーで働いた後、今度はフランス各地やベルギーの農家で住み込みをしながら働いた。「約3年で、15軒ほどの農家を転々としました。有名な職人ではなくとも、『あの人のパンはすごいよ』という情報を手に入れると、そのパン焼き名人を訪ねて移動し、その人独自のパンの作り方を学ぶんです。羊飼いの家や蜂蜜農家など、色んなところで手伝いをして、彼らが育てた麦でパンを焼きました。みんな、月の満ち欠けを見て暮らしているような人達。そこには、生活と仕事が、自然に一緒にありました」。その後、パリのLe Grenier à painに入店。約11年勤める間、バゲットやヴィエノワズリー、パティスリーにも携わり、ディプロムも取得した。
今の店のオープンは約2年前。古代麦を中心に、畑の個性が感じられる粉を厳選している。稲垣さん自身が一人ひとりに接客するのは、それぞれの粉の特徴と味をきちんと伝えるため。「農家の方が栽培して挽いただけで自然のままなので、その時々で粉の細かな特徴が異なり、パンの仕上がりも違う。毎日、粉をこねて、その日の生地の調子を感じて、焼き上げる。すべての工程でコントロールが必要だけど、そこが生きている天然酵母パンの魅力です」。(恵)
パンは量り売り :
例)
Khorasan Blé Dur 1kg 10€
Engrain 1kg 12€
スコーン・ルヴァン ナチュール 1個2.5€
クッキー・ルヴァン 1枚0.8€
Shinya Pain
Adresse : 41 rue des Trois Frères, 75018 Paris , Franceアクセス : M°Abbesses
URL : @shinyapain_montmartre
木〜日 16h30-19h30 ※変更の可能性あり。ご来店時はInstagramでご確認を。@shinyapain_montmartre