色彩の美しさで知られるマルク・シャガールは、白黒の絵もいい。それを見せてくれるのが、エクサンプロヴァンスで開催中のシャガール展だ。第二次大戦中、アメリカに逃れ、1948年にフランスに戻った。展覧会はその後、85年に没するまでの後半生を扱っている。
1949年、14世紀イタリアの小説 『デカメロン』の挿絵の注文を受けたシャガールは、100話から26話を選び、紙に墨と白のグアッシュで描いた。会場には挿絵を施された本だけでなく、和紙の模様を生かし、白黒の濃淡で描いた墨絵もあり、色彩のシャガールを見慣れた目には新鮮に映る。50年代から、大理石、ブロンズなどの彫刻も手がけるようになり、シャガールの絵の中の動物や人物が3Dで出てきたような、愛らしい作品がいっぱいだ。陶芸も始めた。男女の顔を描いた壺の上に動物が乗っており、その腹に小さな動物が描かれているような作品を見れば、シャガールの世界が老いてなお進化し続けたのがわかる。
最晩年は、オートクチュールで出る端切れを衣装にコラージュして、色彩が弾けるような人物像を描いた。これほど幅広く彼の創作活動を扱った展覧会は稀だ。また、見る人の創作意欲を刺激する展覧会も稀だ。(羽)
3月24日まで
Hôtel de Caumont
Adresse : 3 rue Joseph Cabassol, 13100 Aix-en-Provence無休