雨が止み、パリ市庁舎前の広場には人が大勢集まってきた。マクロン大統領が2期目に選出され、ちょうど1年になる晩。時計の針が20時をさすと、カンカンカン…と誰かが鍋を叩き始め、高校生から高齢者まで数百人が続いた。
鍋のフタ2枚をシンバルのように叩く人、スプーン、水筒、空きカンで作った”楽器”を叩く人。料理器具の他にもホイッスル、ブブゼラ、音が出るなら何でもあり、といったところだ。ブーイング、「マクロン、デミッション!(マクロン辞任)」の声、歌…。
年金改革法案に対する抗議は1月に始まったが、同法公布後は鍋叩きが主流となり、各地で連日「鍋のコンサートcasserolade」が行われ、大統領、大臣らは訪問の先々で”鍋の楽隊”に迎えられている。3ヵ月間にわたり、ストやデモを続ける粘り強さには感心していたが、法の公布後も「この改革は社会的に不公正」と、平和裡に、ユーモアをもって訴え続けるのにはさらに驚いた。
1830年七月革命でブルボン王朝が倒され、ルイ・フィリップ王政になった後、共和派は鍋を叩いて不満を表明したとラジオで聞いた。政府は年金改革騒動は早く終わりにしたいところだろうが、鍋のコンサートはまだ続きそうだ。(六)