渡部:11月に本物の学校がオープン予定です。ガレット、クレープの調理学校です。
Q:食材についても?
渡部:そうですね、料理の基本知識ですね。メインはガレット、クレープ、伝統的な料理ですから、それを習得してもらうということです。
Q:愚問かもしれませんが、ガレットを作るためにそれほどの技術が必要ですか?
渡部:ガレットは、結構奥が深いんですよ。まあ、なんでもそうなんですけれど。僕は20年やってわからないことだらけです。それを知るためにフランスへ来たんです。
Q:例えば今だにわからないことというのは?
渡部:僕は見よう見まねでやってきたので、しかもフランス人によって、地方によってガレットもクレープも違うじゃないですか。薄焼きの地域も厚焼きの地域も。それから蕎麦によってもまた違います。地方ごとに蕎麦が違う。蕎麦粉だって仕込んでから2日寝かせた方がいいのか、 3日寝かせた方がいいのか、いろいろなテクニックがあります。また季節によって、春夏秋冬違うとかね。まあ日本の素材でも同じです。フランスのガレットのお店、ってピンキリじゃないですか。観光客目当ての店もあれば、本当に日本の高級蕎麦やさんみたいな店もある。
Q:ですよね。モンパルナスにJosselinジョスランっていう人気の店がありますよね。
渡部:知ってますよ、20ン年前に一度行きました。
Q:あそこのガレットは結構厚くてもっちりしているんですよね。
渡部:それはおそらく生地が2枚、ダブルになっているからでしょう。
Q:そうか、すぐにお腹が一杯になってしまう。半分しか食べられない。ガレットの色はここよりも若干明るかったかな。それって粉によるということですよね。
渡部:パリでは大体みんな同じ粉を使っている、と言います。ブルターニュのものをね。ただ仕込み方は店によって異なると思います。
Q:ここの粉はブルターニュから運んできて
渡部:そうそう、あとは水と塩だけです。塩はブルターニュ産ですが水はパリの水です(笑)。あとはもう生地の扱い方ですよね、保存方法ももちろん。
Q:やっぱり冷却するんですよね?
渡部:そうです。寝かせると甘みが出てきます。
Q:ここは何日ぐらい寝かせるんですか?
渡部:ここは、まあ試行錯誤しながらやっています。まあ、3日とか4日とか。色々試しながらやっています。試さないと答えが出てこない。そういう意味でも奥が深いんです。
Q:今日のお昼にいただいた蕎麦チップは?
渡部:ここで作っています。
Q:ああいうものを考案されたりもする?
渡部:いえ、あれはもともとブルターニュの料理として存在しています。あれ、オーブンで乾かしているだけなんです。ただ中に白ごまを混ぜたり、海藻を入れたりしています。そういう元々ブルターニュにあるものに自分なりの工夫を加える。ブルターニュの有名シェフたちもいろいろされていますよ。蕎麦にしても、りんごにしても。
Q:さっき、試さないと答えが出てこない、とおっしゃったけれど、答えが出てしまうと面白くなくなるかもしれない。
渡部:そう、だから一生答えが出なくていいんです。自分はおじいちゃんやおばあちゃんたちが自分の家で作っているガレットに興味があります。絶対美味しいものがあると思うんです。
Q:まあそれぞれの家のお新香みたいなものでしょうね。
渡部:そう、そういうことです。だから「わー!」っていうすごい人がいると思うんです。だからレストランでは勉強できないことがまだまだある。
Q:もしもクレープに出会っていなかったらフランス料理をやっていたと思いますか?
渡部:そうですね。いや、今でもガチガチのフランス料理をやりたいですよ。やっぱりそういう葛藤があったんですよ。「このままクレープを焼いていていいのかな?」という。20年、という節目節目でいろいろ考えるじゃないですか。5年経って「あれ、まだクレープ?」10年経っても「まだクレープ?」ただしさっきも話しましたけれど奥が深いので、5年経った時の自分を10年経った自分が振り返るとやっぱりできていないんです。これの繰り返しです。だから何かの縁でクレープを焼いているのだから、このまま行っちゃえ、と自分に言い聞かせています。いい方向に解釈していこうと。
Q:でもガレットがお蕎麦だとすると、自分で蕎麦に合うものを色々工夫できる。
渡部:そうですね、日本に居る時よりもこっちに居る時の方がイマジネーション、というんですかアイデアが浮かびます。こちらの食材に触れたり、情報を仕入れたりとか、日本とは全然違うじゃないですか。
Q:日本にいらした時はフランスのものだということを売らなければならなかったから、中に入れるものもフランスを意識しなければならなかったんですよね。
渡部:そうなんですよ。こっちだと逆です。もちろんフランスがベースですけれど、日本を出しやすい。うちの店はフランスと日本、franco-japonaisフランコ=ジャポネですからね。まあブルターニュと日本です。だから日本の要素を入れています。それに自分は日本人なんで、自然と入るんでしょうね。
Q:東京に居た時にはそういうことはほとんどなかった?例えばワサビや柚子を使ってみるとか。
渡部:まあ、そういうことはありました。ベースは同じですから。ただこちらに来て、できるだけ日本でしてきたメニューはやりたくない、という気持ちはありました。こちらで得られるひらめきで今色々やっています。その方が楽しいです。
Q:オデオン店とこのモントルグイユ店では出すものが違うんですか?
渡部:メニューはちょっと違います。オデオンでは、あの巻き寿司みたいなRollロールの選択肢が結構あります。この店では結構クラシックなガレットを一応メインにして、ロールは3種類ぐらいしか置いていません。Maraisマレ店は基本的にクラシックなものばかりで、ロールは一切ありません。だからマレとオデオンの中間が、ガレットとクレープに限ってですが、この店です。この店のオリジナルなところは、もう一つ地下のバーでタパスを出すことです。シンプルで、手の凝らない料理ですけれど、しかもタパスだからポーションも小さいし。でもこのバーとタパスがこの店のオリジナルです。店舗ごとに特徴がある。社長の思惑としては、各店舗コンセプトを変えてオリジナリティを出して行く。
Q:オデオンはテラスが大きくていいですよね。
渡部:そうです、オデオンはオデオンで、ここはここで、また次に開く予定なんですけれど
Q:Batignolバティニョールにですよね。
Breizh Café Montorgueil
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