ドゥ―県の重罪院は4月12日、2016年に日本人女子学生を殺害したとして、チリ人のニコラス・セペダ被告(31)に禁固28年の判決を言い渡した。求刑は終身刑だった。
事件は2016年12月にさかのぼる。交換留学制度でブザンソン大学に同年秋から在籍していた筑波大学生、黒崎愛海さん(当時21)が12月4日深夜以降、行方不明に。警察は4日夜に愛海さんと元恋人セペダ被告がレストランで食事をしたことなどを突き止め、23日に殺人容疑で国際指名手配したが、被告はすでにチリに帰国していた。
仏紙によると、その後の仏日の捜査により、筑波大に留学していた被告と被害者は2015年当時、恋愛関係にあったが、愛海さんが仏留学を機に別れることを希望。被告はこれを拒否して愛海さんのフェイスブックからフランスの友人を削除するよう強要したり、脅迫めいた大量のメッセージを送っていたことが判明した。
また、被告がジュネーブでレンタカーを借りて11月30日から12月6日までブザンソンとその周辺にいたこと、1~2日に愛海さんの住む学生寮の周囲をうろつく被告の姿が防犯カメラに映っていたこと、引火性液体5リットルや洗浄剤を買ったことなどが明らかになった。12月2日には寮生がキッチンで被告を目撃しており、5日午前3時頃に11人の寮生が女性の悲鳴を聞いていた。被告が5~12日に愛海さんのSNSアカウントを使って友人たちに無事でいるメッセージを送っていたことも判明した。
遺体は発見されていないが、そうした証拠から被告が愛海さんを殺害したことは確実と陪審団は判断した。検察側は、被告が被害者を窒息させて殺し、遺体を川などに遺棄したと見ている。
2020年7月にフランスに身柄を引き渡されて裁判に出廷したセペダ被告は、4日夜に愛海さんの部屋で一晩過ごしたことは認めているが、その後に寮を去ったと主張し、裁判でも最後まで殺害を否定した。
3月28日に始まった裁判には日本から愛海さんの母親と妹が出廷。2人の3時間半にわたる悲痛な意見陳述に法廷は静まり返り、母親が「世界中の女性すべてのために、この怪物を自由にしてはいけない」という発言などを仏紙が報じた。