アナスタジア・ラシュマンさん
6月28日から4日間、パリで開催されるFestival du Film de Fesses (性愛映画祭)。5回目の今年は「日本」がテーマだ。日活ロマンポルノの黄金時代を築いた神代辰巳監督作品を軸に、新旧の日本の性をテーマにした作品が、大きなスクリーンで咲き乱れる。
映画祭の創設者アナスタジアさんは、映画会社に籍を置きながら、毎年映画祭の運営に奔走してきた。「映画祭は完全なボランティア。国立映画学校フェミスの試験に落ちた仲間と、『何か楽しいことをしたい』と、ゲーム感覚で立ち上げました。昼間は会社で働き、主に夜や週末を使って準備します」。
映画祭の時期はパリジャンが陽光に誘われ、カフェのテラスを好む。観客数は落ち込みがちだが、かえって配給会社のライバルが減り、映画館を押さえやすいのだ。会社の上司や同僚も彼女の活動は知っている。「仕事はしっかりやってるので大丈夫。それにみんな映画好きなので応援してくれます」。 「“性”をテーマに掲げると、性の多様性への理解を求める映画祭と思われがちですが、肩肘張らない楽しい映画祭を目指しています。何かの立場を代表したり、政治的にコミットする映画祭ではありません。芸術的な「エロス」を、自由にありのまま楽しんでほしい。それは美しく刺激的で、時に深い思考を促すかもしれません」。
エロティックな映画を紹介するのに、「日本」は最適だ。「日本映画は歴史が豊かで、質の高い作品が多い。多くの人は大島渚の『愛のコリーダ』を思い出しますが、今回はまだフランスでそれほど知られてない監督の作品を約20本選びました」。神代監督の作品は『赫い髪の女 』(79)『一条さゆり濡れた欲情』(72)など、代表作6本をセレクション。「神代作品はアヴァンギャルドで刺激的。肉体だけでなく女性の魂まで写します」。
神代監督の『恋人たちは濡れた』(1973)と、その影響下で撮られた塩田明彦監督の『風に濡れた女』(2016)は、2作続けて上映。時代を超えた作品同士の反響を感じたい。他にも田中登、大和屋竺、松本俊夫、足立正生、小沼勝、山本瑛一、周防正行、村上龍、園子温、浜野佐知と多彩な人選。「大和屋竺や松本俊夫の映像表現は斬新で美学的な探求がある。浜野佐知は男社会の映画界で、性愛を通し女性の視線を注入した画期的な存在です」。
プログラムの内容には自信があるが、その反面、テーマのせいでスムーズな宣伝がしにくいと嘆く。「今年は日本文化の紹介イベント《ジャポニスム2018》の年ですが、仲間に入れませんでした。また、芸術的でユーモアもある映画祭の宣伝ムービー*を作りましたが、Facebookからすぐ削除されました。ハードな表現はないのですが…」。
パリでは最後のポルノ映画館が閉館したばかり。インターネットやVRの発達で映像が個人の愉しみへと傾く時代、集団でエロスをオープンに愉しめる場所は、もはや貴重な存在かもしれない。(瑞)
■ Festival du Film de Fesses
3館の名画座にて同時開催。
Reflet Médicis : 3 rue Champollion 5e
La Filmothèque : 9 rue Champollion 5e
Les 3 Luxembourg : 67 rue Monsieur le Prince6e
公式サイトwww.lefff.frで宣伝ムービー*も公開中 !
*チケットプレゼントのご案内はこちらのページから。
*Ovniのニュースレターはこちらからご登録下さい。