20世紀後半の最大のアーティストの一人とされるサイ・トゥオンブリー(1928-2011)の大回顧展。絵画、デッサン、彫刻など140点を集め、年代順に展示した。
アメリカのヴァージニア州で生まれ、東海岸の大学や学校で美術を学んだ。1957年、初めてイタリアに滞在し、その後イタリア人貴族と結婚。ローマにアトリエを持ち、地中海沿岸を旅しながら主にイタリアで制作した。
彼の作品でよく知られているのは、白っぽい大画面に細い線で文字のようなデッサンをした作品だ。画面で泳いでいるような線は、その世界で満足しているように見える。「エレガンス」、「洗練」、「控えめな洒脱さ」という言葉が浮かぶ。
古代ギリシャ・ローマ文明に造詣が深く、文学好きな教養人だったトゥオンブリーは、文字をデッサンのように描いて、神話の世界を表現した。けれども、血なまぐさい神話を描いても、彼の手にかかると、生臭さが表面から揮発していくように昇華されたものになる。
消しゴムで消した跡が残るデッサンも、それが作品の一部となっていて美しい。どこまで行っても崩れない人である。一見、子供が描きなぐったように見えるデッサンでも、まとめてみると、洗練された美意識がわかる。(羽)
4月24日まで 火休
ポンピドゥー・センター