今年は、弾圧や差別に対する人々の抵抗をテーマにした展覧会が多かった。これはそのジャンルの、今年最後にして最大の展覧会だ。美しさとインパクトの強さの両方を併せ持つ作品が、素描、油彩、映画、写真から選ばれた。 パリ・コミューン崩壊(1871年)で政府軍に殺され、棺桶に入れられた庶民の写真は、それだけで多くを語っている。サッチャー政権下で、リバプールの港湾労働者のストを支援した台湾の港湾労働者のデモの映像は、地域を超えた力強い連帯を感じさせる。
おりしも今年は、ソ連の支配に対して民衆が蜂起した1956年のハンガリー革命の60周年記念だ。このときの記録写真もある。しかし、ほどんどの場合、抵抗して蜂起した人々は弾圧された。
11月にパリ公演をした加藤登紀子さんが語った逸話。安保闘争で政府に負けて落胆していた加藤さんのお兄さんを、お母さんが 「やられるのは当たり前。でも、それだけやったのは素晴らしいことじゃないの」と褒めたという。 差別や弾圧の壁が何度作られても、乗り越えようとする人たちは続く。アートはその思いを伝えることができる。
「アーティストたちが抵抗を表現することで、私たちの政治的希望が新たに生まれる」と、哲学者で美術史家、本展示コミッショナーのジョルジュ・ディディ=ユベルマンさんは話した。(羽)
1月15日まで