ボルドー市にCité du Vin(ワイン文明ミュージアム)が6月1日にオープンした。世界のワイン文化を紹介する、有数のワイン生産地に相応しい街の新しいアイコンとして、今夏からフランスの観光スポットに仲間入りする。
2011年の国際建築コンペで選ばれたのは、アヌック・ルジャンドルとニコラ・デマジエールが率いるXTU Architectsの「流線型のガラスとアルミニウムをまとったドレス」作品だ。彼らは昨年のミラノ国際博覧会で、フランス・パビリオンを設計した。ま た、風、水などを取り入れる環境共生型の設計で知られる。
ボルドー市は、周囲の景観を活かしつつ、アイキャッチしやすい独創的な建築を希望した。斬新な現代美術館の建築が経済を急速に活性化させたスペインのビルバオを意識しつつ、工場跡や倉庫が多いこの地域一帯の再開発の発端となるプロジェクトに挑戦した。環境保全Zone Natura 2000に登録されるエリアでもある。
建築家たちは、ワイン生産者たちを訪れティスティングを繰り返した。そのうちに「縫い目のないまろやかさ」という表現が閃(ひらめ)いた。そしてガロンヌ川に霧がたち込める冬の現場で「非物質的で官能的」な建築案が浮かんだそうだ。川が蛇行する地点で「土地が建物のフォルムを誕生させた」と言う。グラスのなかで回るワインやブドウの蔓など、見る人の想像をかき立てる造形だ。 異なるタイプや色のガラスを組み合わせることで、日の出から日没まで、外観はくすんだ色から黄金色へとひと時も同一に見える瞬間はない。
“ドレス”の裾から館内に入ると、1階はワイン蔵のイメージで黒が基調とされ、上階からは白が取り入れられている。ワイン講義室もある。「木なくしてワインは存在しない」と木材にこだわったXTU Architectesは集成材を使い、アーチ型の骨組みを作った。この技術は、大聖堂のような高い天井や、複雑な三次曲面も可能にする。
ワイン文化を五感で体感できるインタラクティブなインスタレーションの後は、地上35mの最上階展望フロア(Belvédère)で、入場料に含まれたグラスワインを試飲して眺望を楽しめる。当館オープニングには、イザベル・ローゼンバウムが撮影した36カ月間の建築現場の写真展、7月中旬からはグルジアのワイン文化を紹介する展覧会が予定されている。
館内にはレストランや売店もあるが、地元気分を満喫するならCité du Vinから徒歩5分ほど、建築家のアヌックとニコラが通っていた Bar de la marineが絶好だ。晴れた日は、ブドウ棚を見上げる中庭で 「今日のおすすめ」をいただきたい。ブドウ棚のある中庭で、現代建築と昔ながらの定食屋さんに乾杯!(薫)
■ Cité du vin
134 – 150 Quai de Bacalan 33300 Bordeaux Tél: 05.5616.20 20 無休9h30–19h30
入場料20/18€。 www.laciteduvin.com/
SNCF Bordeaux Saint-Jean駅からトラムC線(Parc des Expositions行き)でLa place des Quinconces下車。トラムB線(Berge de la Garonne行き)でCité du Vin 下車。
■ Bar de la marine
28 rue Achard 33300 Bordeaux
Tél : 05.5650.5801
Cité du vin
Adresse : 134 - 150 Quai de Bacalan, 33300 Bordeaux , FranceTEL : 05.5616.20 20
URL : www.laciteduvin.com/