10年ほど前、「Banlieues Bleues 」フェスティバルでサインホ・ナムチラクを聴いて「一体これは何なんだ!」と度肝を抜かれた。うめき声、鳥のさえずり、舌打ちのリズム、モンゴルのホーミー(喉歌)…が、舞台に不思議な空間を作り、ベースのウィリアム・パーカー、打楽器のハミッド・ドレイクといったニュージャズの担い手も、そのエネルギッシュな即興にたじたじとなっていた。
ナムチラクはモンゴル北部に接するロシア連邦トゥバ共和国生まれ。今はウィーン住まいでエレクトロポップに近づいたりしていたが、このアルバムでは、トゥアレグ族の伝統音楽をベースにしたグループTanariwenと共演。砂漠の広がりが目に浮かぶようなアフリカンブルースに始まる。『Worker Song』では、力強い打楽器をバックにシャーマンになりきって、ぼくらを別世界に巻き込んでいく。それに続く『Erge Chokka To』では、タイトルのごとく「鳥のように、精霊のように」というナムチラクの歌唱に酔い、どこか懐かしい民謡調の『Nostalgia To』で幕を閉じる傑作アルバムだ。ライブが待ち遠しいなあ。(真)
Music Development Company 20€ 前後。