アルプスの山間の小さな町ポンシャラは、花と出産の季節を迎えています。りんご、梨、リラなどの花々がいっせいに咲き、町はいい香りでいっぱい。少し山へ入ると、ラムソン(ail d’ours)の真っ白な花が広がり、食欲をそそるニンニクの匂いが。運がよければ野生のアスパラガスを摘むこともできます。森の中では山羊、鹿、猪、シャモアなどの子供が生まれ、動物たちが子育ての真っ最中です。
この春、500頭もの子羊が生まれたというセバスチャンさん(35)の農場を訪ねました。
セバスチャンさんは小学生の時から両親を手伝い、羊の世話をしてきました。今は独立し、800頭を飼っています。生まれた子羊もあわせて千頭以上の羊を抱えると、毎日がマラソン状態で、息をつくひまもありません。今は自宅の近くで世話をしていますが、7月には群れを引き連れて3千メートルの高さにまでのぼり、秋まで過ごします。
ご自身も、ふたりの子供の父親。「農業でやっていくのは大変だけど、この仕事はとても好きだよ」と寡黙なセバスチャンさんはぽつり。羊たちを扱う手にも、愛情があふれています。
農場では二匹の子犬も生まれ、母犬の周りを駆け回っています。この日、帰り道では、家路を急ぐキツネに出会いました。(治)