ポルトガル出身のレオノール・アンテュネス (1972-) の作品には、日本の装飾文化を思わせる、余分なものをそぎ落としたシンプルさと控えめな華やかさがある。ボルドー現代美術館で、アンテュネス展を開催している。
植民地時代、1世紀以上にわたり海外に送る物資の貯蔵庫だった建物で、教会のように天井が高い。真鍮の針金をつないだ織物状の作品がドレープを作って吊り下げられている。2階の窓から入る光で表情が変わる。近くで見ると手仕事の素朴さがあるが、離れて見ると天に掛けられた黄金のベールのように美しい。床には、ポルトガルの特産品のコルクが敷き詰められ、真鍮の幾何学模様がはめ込まれている。どちらもバウハウスの織物部門の責任者で、アメリカに移住したユダヤ系ドイツ人デザイナー、アニ・アルバース(1899-1994)の抽象モチーフからインスピレーションを得たものだ。ところどころに置いてある小さなテーブル状のオブジェは、ブラジルに移ったイタリア人建築家、リナ・ボ・バルディ(1914-92)が造ったサンパウロの複合文化商業施設「SESCポンペイア」の外壁の穴の形をしている。奇しくもバルディの展覧会が、東京のワタリウム美術館で3月27日まで開催中だ。こちらと合わせて見ると面白いだろう。本展は、アルバースとバルディという、20世紀の近代美術とデザイン、建築の分野で活躍した2人の女性アーティストへのオマージュでもある。
もうひとつ、籐でできた幾何学模様の衝立がある。日本家屋でそのまま使えそうな味わいがあり、こちらも光を受けて様相が変わる。会場と作家の個性が調和して成功した展覧会だ。(羽)
4月17日まで。月休。
CAPC
Musée d’art contemporain de Bordeaux
7 rue Ferrere 33000 Bordeaux
Bordeaux Saint Jean駅からトラムでJardin Public下車、または一度乗り換えてCAPC下車。