サルコジ大統領念願の定年制改革案が、近年にない市民の反対運動にもかかわらずゴリ押しで上院でも可決され成立、来年1月から施行される。
どこの先進国も年金財政問題で四苦八苦しているなかで、戦後生まれのベビーブーマー世代が年金生活に入り、その赤字総額は323億ユーロにのぼる。2018年をメドに採算をはかるためヴルト労働相が(ベタンクール疑惑に片足をとられながらも)必死で固守した新定年制度。以下はその要点。
●定年年齢が60歳から62歳に。1951年以降生まれた人は、2011年からは毎年4カ月ずつ勤務年数が増え、2020年には41.5年間保険を払い込まなければならない。(女性は従来通り、子供1人につき勤務年数に2年加算)。しかし3児をもつ公務員女性の勤務15年後の定年制は徐々に廃止される。
●一部の公務員は60歳未満で定年できる(国鉄・電気・ガス公社は37.5年勤務し55歳で定年。軍人の勤務年数は15年または25年)。
●労務の苦痛度により労働不能度が20%以上か10~20%と産業医が診断した者は60歳で定年退職できる。
●17歳未満から就労した者は60歳で定年できる。
●年金満額所得年齢(払い込み年数に関係なく満額 —最終給与の65%~70%— を取得できる)を65歳から67歳に延長、毎年4カ月ずつ延長し2016年から67歳に。ただし障害者や、3児をもち育児のため休職し、最低必要年数払い込んだ女性、または家族介護のため休職した者は65歳で満額を取得できる。
●公務員の負担率7.85%は、10年以内に民間と同率の10.55 %に引き上げられる。従来通り民間の年金額は、過去25年の最良給与の平均額が基本となるが、公務員は定年前6カ月の平均給与額で計算される。
●苦痛度:50人以上の企業で、従業員への危険や苦痛に対する予防措置をとらない場合は、総人件費の最高1%の罰金が課せられる。
●50人以上の企業で職業上の男女平等が実行されていない場合も同率の罰金が課せられる。また産休手当と受給期間も給与同様に計算される。
職種により年金は最終給与の39 %~75%という開きがあり*、さらに男女の賃金差は約30%、男性の年金が平均1600ユーロに対し女性は平均1000ユーロ弱にすぎない。
10月27日に統計局INSEEが発表した数字によると、今年に入って100歳以上の人は1万5千人、2020年以降は毎年約8千人ずつ増え、50年後の2060年には20万人に達するという。そのころにはフランス人の平均寿命は女性91歳、男性86.3歳と、3人に1人が60歳以上となる。今回の定年制改革は2018年を標的に定年年齢を2年延長したのだが、2050年の年金総額は1020億ユーロと予想され、赤字額は数倍に? 未来世代は年金問題にどう対処していくのだろう。(君)
*40.5年勤務後の給与額(税込み)と毎月の年金受給額の比較例(9/23付France Soir紙):
一般医:6600€ – 2600€ 技師:5800€- 3440€
司法官:4900€ – 3650€ 中小企業主 :5000€- 2400€
中学教師 :3200€-1800€ 国鉄職員:2000€- 1200€
銀行員:2650€ – 1500€ 農業従事者:1320€-730€