ギリシャの財政赤字が国内総生産GDPの12.7%(債務は国民所得の170%)なのに前政権が6%と過少計上したことで火がつきユーロ圏が大火事に。2月にNYタイムズが、米ゴールドマン・サックス投資銀行が通貨スワップというデリバティフ取引によりギリシャの債務隠しに加担していたと暴露した。
ギリシャの財政危機が投資熱に拍車をかけ、5月7日、パリのユーロ・ドル相場が1年来最安値1€=1.261$まで暴落。さらにギリシャ国債(10年物)の利回りが10%(2年物は18%!)にまで急騰、その約200億ユーロの債券償還期限が5月19日に迫っている。パパンドレウ首相は緊急援助陳情のためユーロ圏諸国を駆け回る。サルコジ大統領は同首相の嘆願に打たれ連帯心を示したのとは反対に、冷たくあしらったのは独メルケル首相。放漫財政が目立つ地中海諸国PIGS、ポルトガル、イタリア、ギリシャ、スペインのなかでドイツ首相はギリシャをラ・フォンテーヌのセミにたとえ(アリにたとえられるドイツ国民の76%はギリシャ援助に反対)、マーストリヒト条約はユーロ加盟国への援助を禁止していると主張し、議会で「財政破綻国ギリシャはユーロ圏から締め出すべき」とまで言明。そんな独首相をラガルド仏経済相は「エゴイスト」と批難し、「ドイツは賃金を削減することで国内消費を犠牲にし、EU市場に40%を輸出しEU産業を圧迫している」とFinancial Times誌(3/15)でドイツへの日ごろの不満をぶちまける。
ギリシャ首相はドイツの高慢な態度に対し最後の切り札、国際通貨基金IMFに支援を依頼すると迫った。仏大統領は、ユーロ加盟国がIMFに頼る第三世界の国になり下がることに屈辱を感じながらも独首相の機嫌取りに必死。5月2日、ようやくユーロ圏16カ国財務相会議で3年間の融資額800億ユーロ(利率5%で独223億€、仏168億€)とIMFの300億ユーロ、計1100億ユーロの融資を決定。支援を急がねば国債所有者(70%は外国投資機関で仏系銀行は510億?相当を所有)への債務不履行(デフォルト)も予想され、ドミノ式に08-09年同様の金融危機に陥りかねないのだ。
パパンドレウ首相はユーロ圏からの融資条件に応えるため緊縮政策を次々に発表。年金の満期を37年から40年に延長、公務員給与・年金の2カ月分の特別支給の廃止、定年年齢を最低60歳(現在平均53歳)にし、消費税を21%から23%に引き上げ、アルコール・タバコの特別税設置など。政府の放漫財政のツケを払わせられる国民の怒りが爆発、2月以来抗議デモが続き、5月5日アテネで暴動化、銀行が放火され3人死亡。
ギリシャ国民の脱税額は国内総生産の25~40%にのぼるそうだが、Le Nouvel Observateur(10/4/22-28)によると、2000年から08年までに給与が27%上昇(ドイツは2.7%)、金持ちの金は外国口座に流出、不渡り小切手の氾濫…と債券も小切手もエーゲ海の水泡に帰しかねない最悪の状態にある。(君)