『Les Bureaux de Dieu 神のデスク』という映画、スター女優が顔を揃えている。ナタリー・バイ、ニコル・ガルシア、ベアトリス・ダル、イザベル・カレなど、そしてマリー・ラフォレは、めったに姿を見せない貴重品? 『太陽がいっぱい』、『赤と青のブルース』(’60)での彼女に、かつての乙女は憧れた。はたまたドキュメンタリー映画作家ヨリス・イヴェンスの未亡人、マルセリーヌ・ロリダン。彼女たちは〈家族計画センター〉の相談係で、「ピルを服用したい」という少女から「好きな男相手に妊娠してしまったがおろしたい」という娼婦までのカウンセラーを務める。
監督のクレール・シモンは、ドキュメンタリーを多く手がけてきた。本作は実際の家族計画センターで、そこに相談にくる人たちの話を記録、それを元に脚本を書き、カウンセラー役を超プロ女優に委ねておいて、相談に駆け込んで来る方は素人俳優が演じる仕掛け。セックスの自由、でもそのお釣りを払うのは女であるという女性問題を考える社会派映画。この映画を鑑賞中、ずっと気になってたのは「語られる主題と映画としての魅力」について。この映画、主題をより面白く効果的に伝えるために監督は工夫したが、この映画の最大の欠点は、映画としての色気(?)の欠如。頭に訴えてくるけど心に響いてこない。
一方、ステファンヌ・メルキュリオ監督の100%ドキュメンタリー『A côté 傍らで』も、ある意味、女性問題を扱った社会派。刑務所の面会日に刑務中の夫や恋人を訪問する女性たちの姿とその心情の吐露を追う。こちらは「人を思う心」について考えさせられた。何年でも好きな人の帰りを待つ彼女たちの姿は、不思議でもあり、時として感動的だ。こちらは心に響く。現実の再構築は小細工しても現実より面白くない。(吉)