日本では英語でドメスティック・バイオレンスDVとも呼ばれている家庭内暴力だが、フランスでも年に何回か防止キャンペーンが行われている。10月2日付パリジャン紙によると、2007年、家庭内暴力による殺害件数は166件(06年137件)と、2~3日に1人の割合で夫か前夫、同棲者あるいは過去の同棲者によって女性が殺害されている。日本でも妻の殺害件数は06年117件と、年間100件以上におよぶという。
2006年法により家庭内暴力罪は夫、同棲者、パクス協約者だけでなく離婚した夫や元同棲者へと適用範囲が広げられたため被害件数が急増。
警察に届け出られた被害件数は昨年だけで47 500件(04年比+31%)。そのなかで夫を暴力容疑で提訴した女性は8.8%に過ぎないが、離婚した夫に対しては50%が訴えている。
以前は警察に家庭内暴力を訴えても、どこの国でも夫婦喧嘩は犬も食わないと言われてきたようにあまり相手にされなかったが、最近は社会の深い問題として警察も対処するようになっている。
しかし暴力をふるう男性にきまって数分後には手をついて謝り、それにつられて女性は自責の念にかられてしまうようだ。また家庭内暴力の引き金となる男性の嫉妬心を「自分が愛されている証拠」ととる女性も多い。ほとんどの女性が泣き寝入りし、子供がいると経済的にも別居するのが難しく辛抱しつづける場合が多い。
M6の日曜番組〈D&co〉の司会者ヴァレリー・ダミド氏は、同紙のインタビューで、乱暴な恋人と別れるのに2年もかかった自分に憤る。「家庭内暴力の被害は女性が弱いからではなく、外聞を損なわないために秘めておくから。殴られては友人宅へ避難、入院もし、その度に彼が泣いて謝るので許していた。家で暴力をふるう男性に限ってそと面がすごくいい」とふり返る。
DVの相談窓口3919*には1日平均250件の電話がかかってくるという。 ここでは匿名で語る被害者の話に耳を傾け、 母子でも数週間避難できる緊急宿泊所や弁護士なども紹介する。
ヴァレリー・タール連帯省政務次官は、DV防止キャンペーンで「家庭内暴力の存在」を認めさせる時代は過ぎた、女性は「対抗すべき」と女性の意識変革が必要と説く。が、暴力をふるう男性に刑を科すだけでは根元的な解決にはならない。06年春、そうした男性の体質矯正を促すカウンセリングセンターが全国60カ所に設置された。彼らはアル中患者やドラッグ中毒者と同様に長期的な治療が必要とされている。
同政務次官はDVの被害者だけでなく、職場でのセクハラや上司の心理的威圧に苦しむ女性(17%)も沈黙を破ることが肝心と説く。(君)
*SOS Viols(レイプ) 0800 059 595
*Solidarité femmes(連帯)01 4348 1866
*職場のセクハラ相談窓口 01 4584 2424