Cabillaud en bouillabaisse
ブイヤベースというと南仏マルセイユの名物料理。岩礁に生息する小魚たちを使ったスープだが、今回は、よいダシが出る真ダラcabillaudを使って北の海のブイヤベース。フランス北部やベルギーでは、真ダラは生クリームと組み合わせることが多いけれど、今回は夏だから地中海風にと、あくまでもブイヤベース仕立てで、オリーブ油、ニンニク、トマトで味を作ります。
ココットのような厚鍋にオリーブ油を思い切って半カップほど加え、それが熱くなってきたらみじんに切っておいた玉ネギ、押しつぶしてからやはりみじんに切っておいたニンニクを加える。玉ネギが透き通ってくるようになるまで炒めていく。
トマトは湯むきしてから二つに切り分け、水っぽい種の部分をとりのぞいてからざくざくっと切って、ココット鍋に加え、もう5分ほど火を通す。ジャガイモは皮をむいてから1センチほどの厚さに輪切りにし、トマトの上に並べる。
真ダラの切り身は皮付きのまま、塩、コショウしてからジャガイモの上にのせる。ここで、白ワイン1カップと水少々を注いで、ひたひたになるようにし、ブーケ・ガルニとサフランを加える。沸騰してきたら火を弱くして、フタをせずに25分ほど煮込んでいく。
この間に、ブイヤベースに欠かせないクルトンの準備。といってもバゲットパンを1.5センチほどの厚さに輪切りにし、ニンニクをこすりつけて香りを移してから、オリーブ油で炒めるだけだ。焦げないように気をつけたい。
次は、やはりブイヤベースに欠かせないルイユというソースの準備(下欄参照)。
さあ、魚やジャガイモに火が通ったころだろう。ブーケ・ガルニを取り出し、塩とコショウで味を調える。刻んだパセリをたっぷり振りかけてから、鍋ごと食卓に出し、それぞれの深めの皿に取り分ける。サフランの色と香りが付いた真ダラのうまさに拍手がわき上がるはずだ。ワインは、マルセイユに近いカシスの白や、バンドルのロゼなどを、軽く冷やしたものがいいだろう。(真)
真ダラの切り身4切れ(一切れ200グラム前後)、玉ネギ3個、トマト5、6個、ジャガイモ400グラム、ニンニク2片、ブーケ・ガルニ、サフラン少々、オリーブ油、白ワイン1カップ、バゲットパン半本、塩、コショウ
●真ダラ cabillaud
真ダラは、タラ科の魚の中では値段が一番張るけれど、純白に近い身はしっかりと締まっているし、味もきわめて繊細。ポルトガル料理やカリブの島々の料理に欠かせない干ダラは、この真ダラに大量の塩をして、天日で干したものだ。中骨ごと一切れ150~200グラムくらいに輪切りにした〈darne〉という形、おろし身の厚いところを長方形に切り分けた〈pavé〉という形、小さめの真ダラは三枚に下ろしてから皮をとった〈filet〉という形で売られている。今回のブイヤベースには〈pavé〉を皮付きのまま使うのがベストだが、〈darne〉でもうまくできるはずだ。〈filet〉は皮をとってあるため、煮ている間に身がくずれてしまう。
●ルイユ rouille
ブイヤベースなどに添えられるオレンジ色がかったソースは、その色が似ていることから「rouille(さび)」と呼ばれている。ニンニク4片とみずみずしい赤唐辛子適量をすり鉢ですったり、おろしたりする。ここから二つの作り方がある。一つは、ニンニクと唐辛子をボールにとり、オリーブ油を少しずつ加えながらマヨネーズ状のソースにする。もう一つは、ニンニクと唐辛子に、水に浸してから手で絞って水気を切った食パンの身適量を加える。そこへ、オリーブ油を大さじ4杯混ぜ入れ、ブイヤベースのスープ少量を加えて適当な柔らかさにすればいい。
●オリーブ油 huile d’olive
少量加えただけで南仏の味がよみがえってくるオリーブ油は、健康食品でもある。ブイヤベースのようにとりわけオリーブ油の香りが大切な料理には、瓶のラベルに〈vierge〉あるいは〈première pression à froid〉 と表記してある化学処理や加熱処理なしの一番搾りのものを使いたい。できあがりにぐんと差が出てびっくりしてしまう。さらに〈vierge extra〉とあったら酸度1%以下の極上品。